KV Kortrijk/本人提供
【独占インタビュー】「自分自身の決断を信じる」。高嶺朋樹が貫く、プロとしての信念|“狂犬”から“救世主”へ、3年ぶりの帰還
Writer / 黒川広人
Editor / 難波拓未
2024年の夏、高嶺朋樹は念願だったヨーロッパ移籍を果たした。移籍先のベルギー1部リーグ・コルトレイクですぐにレギュラーを奪取すると、チームの中心選手として全19試合に出場するなど、サッカー選手として充実の時間を過ごしていた。
しかし、冬の移籍ウィンドウで男は驚きの決断を下す。9年ぶりとなるJ2降格が決定した古巣・北海道コンサドーレ札幌への電撃復帰である。これが3度目の移籍の決断となったが、高嶺がそれぞれの決断に込めた想いを1mmの独占インタビューで明かしてくれた
(後編)
「DFをやっている場合じゃない」という焦り
──あらためて、ここまでのプロキャリアを振り返ると札幌での最初の3年間は、どんな時間でしたか?
ミシャ(ペトロヴィッチさん)のもとでプロキャリアを始められたことは、自分のなかで非常に大きかったと思います。1年目から毎試合使ってもらえて、徐々に自分のポジションをつかんでいくことができました。ミシャさんにはサイドチェンジやターンなどを指導してもらい、彼のおかげですごく成長できた3年間だったと思います。
──絶対的な存在に成長したなか、3年目のオフに柏レイソルへの移籍を決断しました。当時はどういった思いで決断を下したんでしょうか?
あの当時は左CBやCBに落ちる役割のボランチをやっていました。札幌はマンツーマンなので、相手のシステムによっては4バックのCBのような役割も担いました。当時は自分自身すごく焦っていたんです。自分のなかでは、日本代表に入っていくために、海外に移籍しなきゃいけない。今後、代表に入っていくには、CBをやっていてはダメだなと。ミシャのおかげで大きく成長でき、本当に感謝しています。ただ、今後、高みを目指すうえでは左CBや4枚の真ん中をやっている場合ではないと葛藤していました。そういった想いを抱えていたなか、レイソルさんが「ボランチで」と熱心に声を掛けてくれ、札幌にも多くの移籍金を残せる状況だったので、移籍するべきだと決断しましたね。
──あの時は、当初0円移籍のような世論の雰囲気もあって不憫で仕方なかったです……。
しょうがないですよね(苦笑)、俺からはなにも言えなかったので。
──あれからいろいろと経験を積みましたが、高嶺選手の最適なポジションはやはりボランチなのかなと思います。
そう思います。左に落ちるCBや左SBもできますけど、そこにはもっと適した選手がいると思うし、札幌でそういう選手が出てきてくれないと困るっていう感覚ですね。
──ボランチであれば違いをつくれる自信がある?
ありますね。ターンやボールをガツガツ奪いに行くプレーはCBでは少しやりにくいので。自分としてはボランチが一番良いなと思いますし、違いをつくれると思います。
──札幌から柏へ移籍した際、札幌サポーターから愛されていた分、いろいろな声も届いていたと思いますが、当時の厳しい声をどう受け止めていましたか?
それはもうわかっていましたし、届いた意見も理解できるものでした。でも、「それが嫌だ」って言うんだったら、移籍していなかったんで。「自分が上を目指すためには、やんなきゃいけない」と思っていました。自分のリリースのコメントが良くなったですね(苦笑)。「戻っていきたい」っていうのは、僕自身はプレーヤーとしての意味合いではなかったんですが……、表現が良くなかったと思います。でも、愛されているのは感じます。
──そんな強い決意のもと移籍した柏での1年半を振り返ると?
勝てない時期がすごく長かったですけど、自分自身が望んだボランチで多くの試合に出場させてもらいました。怪我も2年目の前半にありましたが、2024年の最初はすごく調子が良かったですし、サポーターが期待するパフォーマンスも出せたと思っています。チームの勝利がもっと付いてくれば、より良かったと思いますけど、後悔とかは全然してないです。
──仮に同じ状況でも柏移籍をまた選択する?
はい。間違いなくしていると思います。
「覚悟を持って札幌に帰ってきた」
──今後のサッカー選手、高嶺朋樹として描くビジョンを教えてください。
繰り返しますが、まず札幌を1年でJ1に復帰させること。そのうえで、札幌でタイトルを取りたいんです。リーグ制覇だけでなく、カップ戦を含めてタイトルを札幌に持ち帰りたいという思いが自分のなかですごく強いんだなっていうのを今回の決断の際に感じました。これは外に出たからこそ感じる感情です。「俺って、やっぱり札幌でタイトルを取りたいんだな」と。
──高嶺朋樹という選手からはプロとしての覚悟をすごく感じます。自身のなかにブレない判断軸がある。
サポーターの方も本気でクラブを応援しているから自分のチームに残ってほしいと思っていると思います。そういう方の気持ちも理解はしますが、選手の立場としては自分のキャリアを求めながら、お金も稼いでいかなきゃいけない。札幌から柏に行く時もそうでしたけど、本当に簡単な決断ではないので。
当時も札幌に残りたい思いはありつつも、「自分の夢を追いかけるためにどうしなきゃいけない?」と考えながら行動していました。選手個人は、自分自身が下した決断を信じるべきだと思うんです。柏に移籍する時も本当にめちゃめちゃ考えました。札幌に残るのか、柏に行くのかを何回も繰り返して、心に決めたけど、「やっぱり残ることにしよう」とか、「やっぱり行こう」とか、そういうことを何回も何回も繰り返したうえでの決断なんです。選手も自分の人生が懸かっているので。例え決断した道で上手くいかないことがあっても、「残ったほうが良かった」などの声はタラレバです。選手個人として後悔しない決断をするべきだと日々、実感しています。
──では、今回の移籍も、自分自身が最も後悔しないと感じた選択だった?
はい。それが最も後悔しない選択でした。
──高嶺選手は札幌ではピッチ内外でチームを引っ張る立場になると思います。
チームを引っ張っていきたいという思いは強いです。そして、実力を含めて、自分自身は引っ張れると思っています。本当に2025年の1年、キャンプの始めから互いに求め合って競争し合いたい。どれだけJ1に上がりたいか、をチーム内に伝染させていくことが大事だと思っているので、自分が先頭に立ち、やっていくつもりです。
──札幌の沖縄キャンプにも初日から合流する予定ですか?
その予定です。荷物も全部ベルギーから持ってきているので。
──また、コロナの影響で高嶺選手は札幌サポーターの制限なしの応援を体感していないと思うので、そこも新シーズンの楽しみなんじゃないでしょうか?
楽しみですね。僕はまだ個人の応援歌もないですし、自分のプレーを見てもらって、札幌で俺の応援歌を作ってもらえることも楽しみにしています。
──2025シーズンに向けた決意の言葉を聞かせてください。
本当にJ1昇格っていうところを求めてやっていきます。最初から「絶対に昇格するんだ」とチーム全体で目線をそろえて、一戦一戦の重みを感じながら必ずコンサドーレ全体で成し遂げたい。そのためにも、サポーターの力が本当に必要ですし、北海道全体でその目標を達成できるように、自分たちは今から準備していきます。チームを引っ張っていくところ。そして、毎日死力を尽くして勝ちを目指して戦う姿勢を必ず見せると約束します。
── 最後に札幌サポーターへ向けたメッセージをお願いします。
自分自身、本当に覚悟を持って札幌に帰ってきたので。サポーターのみなさん全員に昇格と、その先の景色を見せたい。だからこそ、サポーターのみなさんには応援に来てほしいですし、自分たちのことを声援で後押ししてほしいなと思います。
── J1復帰とその先の景色。高嶺選手が優勝カップを掲げる瞬間を待っています。
札幌の歴史を小さい頃から見ている身からすると、札幌でのタイトルは特別です。その時は俺も泣くと思います。待っていてください。
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