ヴェルディを愛し、ヴェルディに愛されて|“コイカジ”がつなげるフットボールの輪

F-connect

Jリーグ

2024.05.22

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ヴェルディを愛し、ヴェルディに愛されて|“コイカジ”がつなげるフットボールの輪

北健一郎

Writer / 北健一郎

Interviewer / 北健一郎

Editor / 難波拓未

小池純輝と梶川諒太。東京ヴェルディでファン・サポーターに愛された“コイカジ”は、どのようにして誕生したのか。そして、共同で立ち上げた一般社団法人F-connectとは。第2回ではヴェルディ時代の活動を振り返りながら、ヴェルディへの愛を熱く語ってもらった。
(第2回/全3回)

大好きなヴェルディのために

──移籍を経て2019年、2人は東京ヴェルディで再びチームメイトになりました。

小池 本当に偶然だったんですけど、またカジと一緒にプレーできることは本当にうれしかったです。

梶川 僕も本当にうれしかったです。

──お互いに戻ってきて、チームのためになにかをやりたいと考えていた?

小池 ヴェルディにいればいるほど愛情が深くなっていくんです。

梶川 その感覚、めっちゃわかります。

小池 1人の選手としてピッチ上で活躍することも大事ですけど、「ヴェルディを盛り上げたい。ヴェルディの力になりたい」という思いがどんどん大きくなっていきました。どうすれば応援してくれている人たちが喜んでくれるか、選手のことを知ってもらえるか。そういうことをずっと考えていました。

梶川 直近の活動で言うと、2人でキッチンカーを運営して、ホームの味の素スタジアムに出店しました。きっかけはサポーターがSNSで当時のヴェルディは「スタグル(スタジアムグルメ)が少ない」と指摘しているのを見たことでした。ヴェルディの試合を盛り上げるために、スタジアムに来る楽しみの一つになってほしいという思いを込めて、2人でお金を出し合ってキッチンカーを購入したんです。

──YouTubeでもクラブのことを積極的に広める活動をしていました。

小池 YouTubeはなんで始めたのかな。カジ、覚えている?

梶川 その時はYouTubeをやっているサッカー選手はほとんどいなかったですよね。

小池 そうそう。わりと先駆けだった気がします。マキヒカくんとかウメちゃんとかがやっているくらい?

梶川 そうですね。でも、今みたいに登録者が50万人いる感じではなかったです。

小池 あっ、思い出した。2人でサッカーの魅力を伝えられるようなチャンネルを始めたいと話していて、チャンネル名はTwitter(現X)で募集しました。そのなかにあった『コイカジTV』に決めて、みなさんが「コイカジ」と呼んでくれるようになったんです。

サポーターと育んだ愛の循環

──ヴェルディでのコイカジの活動を通じてどんなものを得ましたか?

小池 本当に自分たちはヴェルディが大好きで。ヴェルディのことを知ってもらいたい、魅力を伝えたいという思いでああいう活動をしてきました。そのなかには応援してくださる方々に喜んでもらいたいという思いもあって、結果的には活動を通して僕たちの思いはきっとファン・サポーターの方たちにも届いていたんじゃないかなと思います。ファン・サポーターの方たちは応援という形で僕たちにたくさん返してくれたと思っているし、愛情の循環が生まれていると信じています。

梶川 愛情の循環(笑)。

──梶川選手はヴェルディに3回加入しています。帰ってくるたびに愛されていることを感じましたか?

梶川 自分で言うのも変ですけど、すごく愛をもって応援してもらえていたと感じています。コイカジの横断幕もスタジアムの脇に出してもらいました。 基本的にはキャプテンを務める選手しか出ないような特別なものなので、すごく特別に感じました。

小池 あれは感動したね。

梶川 大きな怪我をした時に出してくださった『With KAJIKAWA』を見ると、勝手に“コイカジ”として活動していただけなんですけど、本当にやってきて良かったなと思いました。J1昇格が決まった時はピッチのなかでみんなの顔を見て涙が出ましたけど、最後にゴール裏に行くと本当に知っているサポーターばかりで、「この人たちも、やっと報われたな」と感じて、もう一度、感極まりました。僕も勝手に相思相愛だったと思っています。

──小池選手は2021シーズンにJ2で日本人得点王(41試合出場・17得点)という結果を残しています。F-connectでも、コイカジでも、ピッチ外の活動に精力的に取り組みながら、ピッチ内でも結果を出せることを示しました。

小池 「そんなことやってんなら、練習しろよ」と言う人が昔はよくいたと思います。だけど、ピッチ外でやってきた活動が、自分自身が選手として長くプレーできている理由であり、結果を出せた理由でもあると自信をもって言い切れる。やってきて良かったと思った瞬間でした。

梶川 僕もうれしかったです。

──2023シーズンはクラブを支えていた2人があまり出場機会を得られないなかで、チームがJ1昇格を決めました。複雑な感情もあったのでしょうか?

小池 昇格した瞬間は泣かないと決めていたんですけど、試合終了の笛が鳴った時に隣でカジが号泣し始めました。それを見た時はギリギリ耐えていたんですけど、ピッチに降りて、みんなの姿を見たら涙がどんどん出てきました。カジとは苦しい時も一緒に頑張ってきましたし、ましてや同じチームで2回も一緒になることはなかなかありません。

そのなかで、2人ともヴェルディにいる時に昇格できたことは、やっぱり一生に一度の経験だと思います。もちろん2023年はいろんな感情がありましたけど、昇格の部分で言うと報われたなと。今はヴェルディを離れましたけど、1人のサポーターとして結果を追っていますし、気にしています。

“コイカジ”がヴェルディに残したもの

──2人はヴェルディを2023シーズン限りで契約満了になりました。契約満了が発表された時、クラブのSNSはたくさんのファン・サポーターによる別れを惜しむメッセージと、新天地での活躍を期待するメッセージであふれました。こんなに愛されて、惜しまれてする移籍はあまりないと思います。

小池 本当にありがたかったです。僕の場合は現体制になってから出場機会が減っていたので、契約満了も覚悟しながらの1年でした。なので満了を告げられた時は「仕方ない」という感情が強かったことも確かです。でも、やっぱりヴェルディでプレーし続けたかった思いもありました。

梶川 純輝くんの置かれている状況での取り組みをずっと見ていました。 正直、僕は純輝くんに「もうさすがに(ヴェルディを)出たほうがいいんじゃないですか」と言ったこともあったんです。それくらいキツイ状況でした。それでもやっぱり歯を食い縛りながらトレーニングに全力で取り組んでいた。

一番年上の選手がそういうふうにやっていると、若い選手はやらざるを得ない。だからこそ、試合に出てない選手もチームのために尽くせたのかなと思います。そういう雰囲気をつくり出したのは、間違いなく純輝くんだった。

──小池選手が最後までやりきれた理由は?

小池 ヴェルディが好きだから。それ以外ないんですけどね。シーズン途中で他のチームに移籍する選択肢もあったんですけど、やっぱりヴェルディと契約があるのに他のチームのユニフォームを着てプレーするイメージが湧かなかった。1年間はどんな形でもいいからチームの力になりたいという気持ちですかね。なので、シーズン途中での移籍は考えていませんでした。もちろんきつかったですよ。でもね。

梶川 いろんな選手を見てきましたけど、試合に出ていない時に不満を表に出しちゃう選手はいます。でも、結局そういう時に自分と向き合える選手がプロとして長くプレーできると感じていたので、「やっぱり純輝くんはやるよな」と思いながら見ていました。それでも、ああいう状況でも最後まで腐らずに一生懸命に取り組める選手は、本当に一握りしかいません。だから、残った選手は純輝くんの姿勢から確実に学んだと思います。

小池 どうかな(笑)。

梶川 ははは(笑)。でもきっと、同じようにやってくれているんじゃないですかね。ずっとヴェルディの試合を見ていますけど、去年は試合に出ていたのに今年は出場機会のない選手もいます。でも、純輝くんの姿勢を見ていたら、やっているんじゃないかなと。てか、やっていなかったら「お前、なにしてんねん!」という感じなんですよ(笑)。それくらいのことを残したと思います。

小池 そうだといいね。ありがとう。

──今回はヴェルディ時代を掘り下げてお話を聞かせていただきました。

梶川 ダメですよ、コイカジにヴェルディの話を聞いたら長くなっちゃいます(笑)。

小池 間違いない(笑)。でも、2人ともそれだけ愛情が深いんですよ。

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