北海道コンサドーレ札幌
【独占インタビュー】三上大勝GMがクラブ創設30周年で目指すもの|Jリーグ60クラブでNo.1の発信を目指して!コンサドーレ広報の変革
Writer / 黒川広人
Interviewer / 黒川広人
「中の人、変わった?」
コンサドーレのサポーター間で、2024シーズン、度々話題になるほど北海道コンサドーレ札幌のSNS投稿が活性化されている。
投稿はたびたびトレンド入りし、会員制ファンサイトの登録者数も過去最多を記録した。
変化のキッカケは2023年末、三上大勝代表取締役GMが広報チームを集めて投げかけた「JクラブでNo.1のSNS発信を目指さないか?」という一言だった。
それまでSNSの使い方が不得手と言われていたクラブの広報変革に迫る。
(第4回/全4回)
60クラブでNo.1のSNS発信を目指す
──2023年末、三上GMから広報チームに「SNSでJクラブでNo.1を目指さないか?」という投げかけがあったそうですが。
はい。われわれのクラブが今後も大きくなっていくためにファンベースの拡大というのが重要になってきます。そのための1つの施策として、SNSでの発信を今まで以上に用いて、コンサドーレに関心のある人はもちろん、興味をもっていないような人にも、魅力を伝えるタッチポイントを増やしていこうと。SNSはそのために有効なツールの1つだと思ったんです。
──SNSにこだわった理由は?
1つはわれわれがお付き合いさせていただくパートナーやサポーターの方々を含め、「コンサドーレを通して、北海道を豊かに元気にしたい」という同志がたくさんいて、可能性に満ちたクラブだと思っているからです。例えば、競技面でNo.1を目指すには、チームとしてクリアしていくべきステップがあります。ただ、SNSに関しては最高のファンがすでにいるなかで、彼らと一緒に目指すことで、十分実現できるのではないかと。ですので、SNS発信において、Jリーグ60クラブのNo.1を目指さないか?と。
──広報チームのリアクションはどうでしたか?
ポジティブに受け止めてくれました。ただ、広報業務に関わる社員が5名いるのですが、5名だけでNo.1を目指せるかという話がありました。僕からは、パートナー企業の中にもSNS発信に精通している企業さんもいるので、そうした方々の人的リソースや技術を借りつつ、5名のスタッフを中心に目指す形はどうだろう?と話して、広報グループのみんなも納得してくれました。
──前向きな話し合いになったと。
はい。ただ、ご協力してくださるパートナー企業とコンサドーレの考えている表現の仕方に相違はないのか?話し合いの場を設けさせてもらいました。わかりやすく言うと、プロサッカー選手から大きく逸脱したことはしない。選手のブランドを守ったなかで、コンサドーレに興味のある人、現時点では興味ない人にでも、おもしろいねということが伝わるコンテンツをつくっていきましょうと。結果的には、いい話し合いができて、広報チームからもぜひ、パートナー企業さんと組んでやることで、No.1に向けた体制を組めるんじゃないか?という話になりました。
──60クラブでNo.1になるうえで指標とした数値は?
どのSNS媒体でもいいので、フォロワーの伸び率でNo.1になることにしています。同時に、各SNSを、どの領域の人々に届けるのかを整理することが大事になってきます。
──ここまで3カ月の数字を評価すると?
1月の沖縄キャンプ以降での数字をベースにすると、特にTikTokでは狙っていた通りの数字がとれています。もう1つは、2024年のコンサドーレの広報って変わってきたよね!ということをよく耳にしたり、SNS上でそういった会話がされていることに、改革の第一歩として大きな手応えを感じていますね。
──三上さんもSNSのチェックをされているんですか?
正直に言うと、もともと僕は見ないほうでした。でも、みんなが頑張っていることをしっかりと確認しないといけないので、すべてのSNSに登録して、ちゃんと見ています。
──DAZNでの試合視聴をうながす発信も積極的に行っていましたが、2023年の理念強化配分金の振り返りと2024年の目標を聞かせてください。
まず、2023年に関してはDAZNの理念強化配分金が競技順位、人気順位ともに一桁順位(1〜9位)から支給される形で、チームの目標も一桁順位でした。だからこそ、われわれフロントとしては理念強化配分金も一桁順位を目指そうということをクラブ内で意思統一し、われわれの考えをサポーターにお伝えさせてもらいました。
すると、皆様から一桁順位に入るために、自分たちはなにをすればいいんですか? DAZNを見ればいいんですか? ハイライトですか? フルマッチですか? など、さまざまな問い合わせを受け、われわれも答えられる範囲でお答えし、“共闘”した結果、最終的に8位という数字を残せました。理念強化配分金に関してはアウェイでの試合も、ハイライトでもフルマッチでもしっかりと換算されます。
2024年はさらに上を目指したいところですが、人気順位で一桁順位に入るには、競技順位と同等以上にハードルが高いのが現状です。次はトップ5を目指しましょう!と簡単には言えません。そこを見据えつつも2024年も2023年同様に一桁順位を目指していきたい。そのなかで2023年の8位から半歩でも上を目指せるようにトライしていきます。
──メディアやサポーターへの情報公開など含めオープンなスタンスと感じるのですが、今後もその土壌は残していきたい?
原点にあるのは、サポーターだったり、市民だったり、北海道のみなさんに必要とされることです。彼ら彼女らがいなかったら、選手もクラブも成り立たないわけですから。コンサドーレは練習環境も経営的な話も含めて、できる限りすべてにおいてオープンにしていきたい。そこは監督や社長が誰であろうと、コンサドーレのアイデンティティとして、今後も残していくべきだと思っていますし、残していくつもりです。
クラブ創設30周年に向けて
──SNSでの成果が出ている一方、集客で苦しむ現状をどうとらえていますか?
2023年第一に優先させてもらったのはクラブの収益化という観点でした。そこを整備しなければ、10年、20年、30年という単位で考えた際、クラブ経営としてすごく難しくなります。まずは、各事業部における収入・支出、利益をしっかりと整えなければいけない。そういった背景から、入場料収入に関しては、ダイナミックプライシングを採用しました。その結果、2023年の平均入場者数が約1万5000人と残念ながら、コロナ以前のアベレージを下回っている現状ですが、売上としては過去最多の収益を出すことができました。
──集客と収益のバランスは非常に難しい舵取りになりますね。
はい。ただ、その結果、「ライト層」と言われる、年に1回・2回来て下さる方々にとって手が出しづらい価格になっている側面があります。そこも改善していこうと向き合っていますし、すでに手は打ってあります。現時点で今シーズンは約1万3千人という平均入場者数ですが、平均入場者数1万8000人にもっていくことを目先の目標に、今後のゲームで改善しながら、目標を達成していきます。具体的には、ホームゲーム6試合、夏まで、秋までというように、何個かのスパンで具体的な打ち手を定めています。
──具体的な打ち手とは?
SNS周りで言うならば、コンサドーレのSNSが面白いという話が上がっているなか、より選手の素顔を出して、その選手を見てみたいと思ってもらえるような取り組みを継続していくことが1つです。一方でダイナミックプライシングでいうならば、まだ確実なことではないですけど、一部を内製化みたいなことはできないだろうか?と。
要はダイナミックプライシングというアウトソーシングに任せているなかで、過去の実績などを踏まえて、金額が出る現状ですが、われわれからしても、「この金額では手が出しづらい」という席もあります。そういった一部の座席だけでもわれわれ内部の人間でコントロールし、席種に合わせて修正金額を入れることで、特にライト層と言われる方々が来たいと思えるような価格設定にできないか?と調整しているところです。
──過去には海外の有名選手を集客の起爆剤にする戦略も練られてた時期もあったと思います。ロナウジーニョの獲得に乗り出したこともあったとか……。
はい。オランダのアリエン・ロッベンは実際に僕も現地に会いにいって、交渉のテーブルに着いて一番近づいた事例です。今もそういった可能性はないわけではありません。ただ、最も重要なのはうちのサッカースタイルに合うかどうか。どんなに人気選手でも、うちのサッカーにフィットできなければ難しくなる。それらをクリアする人気選手がいるならば、可能性は0ではないですし、リサーチは今でもしています。
──2024シーズンのクラブの目標は?
シーズン移行が決定した2026-2027シーズンはクラブ創設30周年にあたる年です。そこで飛躍をするためにも、2024年・2025年の2シーズンを踏ん張らないといけません。同時にこの2シーズンでこれまで広げた風呂敷に少しでも身の丈が合うように調整していくことで、30周年のタイミングで新たなトライができると思っています。
そういった意味でも、この2年間、絶対にJ1という国内最高のリーグにいることが至上命題です。しかし、そのなかでも10位以内をしっかりと見据ていきたい。それがサポーターの方々と共有したい目標です。そういった継続をしていくことで、ルヴァンカップ、天皇杯というカップ戦でタイトルにも近づけるはずです。
──2024シーズンは我慢の1年になっていくと思います。今後に向けた決意を聞かせて下さい。
今、やらなければいけないことはまず降格圏を脱出することです。(4月6日の第7節)ガンバ大阪戦の勝利で、チームとしてようやくこの方法で間違いないということを思い出している時期です。今後のゲームで結果を残せれば、自信が確信に変わっていくはず。それによって、選手内でさらに競争が生まれるし、見ている人々からすると安心感に変わっていくと思います。
一方、クラブとしては、一歩間違えると債務超過ということが起こり得る状況です。僕らが一番最初にやらなければいけないことは資本的にしっかりとした体制を築くこと。その体制で30周年を無事に迎えて、さらに飛躍ができる準備をしないといけないと思っているので、最大限、力を尽くしていきます。
──サポーターにクラブとしてお願いしたいことはありますか?
パートナー企業を含めて、クラブ創設以来、2023年は最高の企業数・金額のサポートをいただきました。その大きな要因が、サポーターの方々がパートナーさんの飲食店を積極的に利用してくださること。コンサドーレのパートナーになってから、サポーターさんがたくさん来てくれて、なにより「ありがとう!」と言われて、こんなことは今までになかったと。
つまり、サポーターの皆さんの普段の行動が、パートナー企業からすると今までに経験したことのない社員の幸せと、直接の売上アップにもつながっているんです。
──素晴らしい相乗効果ですね。
はい。本当にありがたい関係ができていて、あらためて私たちのサポーターってすごいと思っています。そういった意味でもサポーターの方々には、すでに十分過ぎるほどサポートをいただいているので、ぜひ継続してやっていたきたいです。
もう1つだけ、わがままを言わせていただくと、次なる課題は観客動員です。サポーターがもう1人を誘いやすい環境をどうつくるか?僕らもいろいろなアイデアを出していこうと思っています。今の平均入場者数1万3000人のサポーターがもう1人ずつ連れてきてくれたら2万6000人になります。誰かを呼びたくなる環境をわれわれがつくりたいと思っているので、その際には自分+1を札幌ドームに連れてきていただけると非常にうれしい限りです。
1人だったら早く行くことはできますが、みんなでだったらより遠くに行けると思っています。その遠くにコンサドーレを通して、みなさんと歩んでいきたいと思っています。これからも共に戦っていただければ、本当にありがたいです。
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