毎熊晟矢が見せる“適応力”の正体とは?|森保ジャパン アジアカップ戦記 vsインドネシア

Taisei Iwamoto

日本代表

2024.01.30

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毎熊晟矢が見せる“適応力”の正体とは?|森保ジャパン アジアカップ戦記 vsインドネシア

 安藤隆人

Writer / 安藤隆人

右サイドバックの2番手にとどまるつもりはない。グループステージ第3戦、インドネシア戦で初先発した毎熊晟矢は、積極的な攻撃参加で3-1の勝利に貢献した。変幻自在の位置どりと、有機的なコンビネーション。日本代表で大きく存在感を高める26歳が持つ、特殊な能力に迫る。

現代サッカーに求められるSB像

日本代表における右サイドバックのポジション争いは、アジアカップにおいて毎熊晟矢と菅原由勢の間で激しく展開されている。1、2戦目は菅原がスタメン出場し、毎熊にチャンスが回ってきたのは第3戦のインドネシア戦だった。

「1、2戦目は悔しい思いをしていたので、この試合にかける思いは強かった。自分は自分の良さで勝負したい」

毎熊が出そうとした“自分の良さ”とは何か。

近代サッカーにおいて、サイドバックの役割は多岐に渡り、対人や1対1などの守備力というベースに加え、縦へのスピード、突破力、クロスの質などの攻撃力が求められる。さらに今、それにプラスして求められるのが、ボランチやトップ下の選手と同じように、人と人をコネクト(つなぐ)する能力だ。

中盤で数的優位を作るためにはサイドの大外のレーンでアップダウンをするだけではなく、中のスペースに入って、CBやボランチからの縦パスを引き出したり、トップ下やFWのサポート、サイドハーフとの横のスライド、ときには3人目の動きでラインブレイクを図ったりと、ビルドアップからフィニッシュワークに至るまで関わり続けないといけない。

サイドバックはフィールドにいる選手で一番全体の視野が確保しやすい位置にいる。だからこそ、味方の陣形、相手の立ち位置を見て、自分がコネクトをする場所を見つけながら、ポジションをとっていく。

サイドハーフが内に絞っていれば、中央をサポートしながらも、大外のレーンを飛び出していく準備を常にしなければいけないし、ワイドに張っていればサイドハーフとFW、トップ下、ボランチの間をつなぐスペースに入り込み、かつインナーラップでラインブレイクをする準備をしなければならない。

毎熊はこれができる希少価値の高いサイドバックだからこそ、海外勢がずらりと揃う日本代表に食い込むことができた。しかも、堂安律や伊東純也など強烈な個性を持つ選手に合わせてポジション修正やプレー選択をするなど、ハイレベルな環境にもすぐに適応したことで一気に存在価値を高めている。

人と人を“コネクト”する特殊能力

堂安律と右サイドでコンビを組んだインドネシア戦。開始早々の3分にさっそく試合を動かすプレーを見せた。

DFラインでのボール回しからCBの冨安健洋がボールを持った瞬間に、右ワイドに張り出した堂安に対し、中に絞った状態で相手陣内深くに入り込む。冨安から受けたボールを素早く堂安に預けると、そのままインナーラップを仕掛けて堂安にカットイン、縦パスなどの複数の選択肢を引き出した。堂安はカットインを選択し、抜け出した上田綺世にスルーパスを通したことでPKを誘発させた。

35分にはクリアボールを敵陣で拾って、そのまま中央にドリブルで仕掛けると、サポートに来た久保建英に一度預けてから、そのままペナルティーエリア内右のスペースへ走り込む。ここに久保から浮き球のパスが届くと、毎熊は右足ダイレクトで中央の中村敬斗に折り返して決定的なシーンを演出。

後半に入ると、「律にはハーフタイムに(左SBの)中山(雄太)選手が少し落ち気味になって、(DFライン)3枚で回し始めた時は、自分は高い位置にいくからどんどん中に入ってほしいと伝えました」とコミュニケーションを取り、内に絞った堂安を生かすべく、前半とは違って大外のレーンを積極的に活用した。

26歳のニューフェイスは、貪欲にアップデートし続けている。

「(インドネシア戦の)映像を見返すと、もっと場面場面での立ち位置を変えた方がいいと思う部分もありました。そこはもっと良くなるという印象を受けています」

人と人をつなぎ、攻撃と守備をつなげる稀有なサイドバック・毎熊晟矢の進化はまだまだ止まらない。

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