バーレーン戦で復活の三笘薫は、日本を優勝に導くか?|森保ジャパン アジアカップ戦記

Taisei Iwamoto

日本代表

2024.02.03

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バーレーン戦で復活の三笘薫は、日本を優勝に導くか?|森保ジャパン アジアカップ戦記

1mm編集部

Writer / 1mm編集部

Interviewer / 北健一郎・安藤隆人

Editor / 舞野隼大

敗れれば大会が即終了する決勝トーナメントの1回戦。日本代表は、AFCアジアカップ2023ラウンド16でバーレーン代表に3-1で勝利。日本の勝因はどこにあったのか。毎試合失点しているがチームとしてこのままで問題ないのか。そして、ついに怪我から復帰を果たした三笘薫はこれから日本を勝利へ導けるのか。試合を終えた直後、現地で取材をする1mmの編集長・北健一郎とサッカージャーナリスト・安藤隆人氏がバーレーン戦を振り返りつつ、次の準々決勝・イラン戦を展望した。

動画ver.はYouTubeにて公開中!

毎熊晟矢の原点は東福岡高校時代にあり

 ラウンド16のバーレーン戦はいかがでしたか?

安藤 バーレーンは侮れない相手だったので、そこでテンポよく2点を取れたというのは非常に大きかったです。その後、1点を失点してしまいましたけど、南野(拓実)選手も言っていたように、トーナメントで勝つためになにをすべきかをチームとして明確にできたんじゃないかと思います。

 次の準々決勝は中2日で行われます。基本的にはグループステージ第3節のインドネシア戦の先発をベースに、町田浩樹選手がいたポジションが板倉滉選手に代わった以外は同じメンバーでした。この顔ぶれは安藤さんは予想通りでしたか?

安藤 (メンバーを入れ替えて)この流れを止めるか、2試合を1セットとしてもう一度組み直すかと考えた時に、森保監督は流れを維持した。その判断が如実に出たというのが印象的です。まずは流れを切らさないことと、この後にメンバーを代えて2チームを用意するという意味では、まず流れを消さないことを優先して次はメンバーを大幅に代えてくるんじゃないかという予想はできますね。あとは消耗の面で中2日というのはちょっとあり得ない日程なので、そこは加味されるんじゃないかなと思います。

 そういったことを踏まえて今回のメンバーが選ばれたと思うのですが、日本にとって大きかったのは先制点を取れたことでした。ゴールにつながったのは毎熊選手のミドルシュートでした。

安藤 あのシュートにはびっくりしましたね。

 毎熊選手は今こうして日本代表でも活躍するような選手になりましたけど、安藤さんはかなり前から取材していますよね。

安藤 そうですね。東福岡高校時代から見ていまして、高校時代はFWだったんですけどFWっぽくないなと思っていました。東福岡のワントップはどちらかと言えば、ポストプレーをしながら裏を抜けていくんですが、毎熊選手はあまりポストプレーをやらなかったんです。当時はワントップらしいワントップの餅山大輝選手がレギュラーで、毎熊選手はどちらかと言えばサブに回る存在だったんです。ワントップらしい適正ではなかったですけど、V・ファーレン長崎で手倉森誠監督と出会って華が開いたんです。

 『1mm』で安藤さんに「毎熊晟矢が見せる“適応力”の正体とは?」という原稿を書いていただいたんですけど、「人と人をつなぐ」というのがキーワードだったじゃないですか。その能力をバーレーン戦でも発揮されていましたよね。

安藤 毎熊選手は今までそんなことを言ってなかったんですけど、試合後のミックスゾーンで「人と人をつなぐ」とまんま言ってたんですよ。これを聞いて勝手にテンション上がっていました(笑)。SBは中へただ単に入っていくだけでなく、なんのために入るかと言ったら、スペースを埋めて人と人をつなぐため。そういう意味では今思うと東福岡高校時代からその才能はあったんだなと。ワントップでありながらなんでワントップっぽくないんだろうと思っていたら、人と人をつないでいたからなんです。要するにワントップでありながら1.5列目に落ちてゼロトップ的な感じだったんです。でもそれが抜群にうまかったんですよ。

 空間をちゃんと認知して、スペースがどこにあるかをしっかりと見つけられると。

安藤 あと人を認知しています。空間よりも人なんじゃないかと思っていて、人を認知した上での空間認知なので、間に入り込めるとすごく感じます。

 今の日本の右サイドは毎熊選手がディフェンスにいて、一列前に堂安律選手がいて、真ん中に久保建英選手がいる。このユニットの連携がすごくスムーズに感じるのですが。

安藤 マニアックな話をすると、東福岡も4-3-3だったんです。インサイドハーフが2枚でウイングがいてワントップというかたちだったのですが、そこを入れ替わる動きがものすごかった。(ワントップの位置から)ウイングにも張っているし、落ちる動きもするし、今思うとコネクトする力が非常にあったんだなと思い出しました。

 先制点の場面では、毎熊選手が中に入っていっていきなりシュートを打ったじゃないですか。シュートを打ったのは、そのちょっと前に会場の大型モニターに「日本0:バーレーン1」と、シュート数が表示されていたかららしいです。それで「結構ボールを持てているけど打ててないんだ。じゃあ打とう」という判断だったらしいです。空間も認知して、人も認知して、モニターも認知していると。認知力がすごいんです(笑)。その毎熊選手とセットで、左サイドバックには中山雄太選手が出ているじゃないですか。彼の存在を安藤さんはどう見ていますか?

安藤 ものすごくいいユニットになっていると感じます。今日、守田(英正)選手も言ってましたけど、両サイドバックが(内側に)入ってくるタイミングが絶妙で、僕はそこに合わせてトライアングルを形成すると。それだけ守田選手の見えている力があると思いますし、離れた距離にある両サイドの連携ができていることが、最大の強みだと思います。

 毎熊選手は、中山選手のことを自分をうまく生かしてくれていると話していて、右サイドが攻めやすくなる状況を左サイドの中山選手が作っていてゲームメイクができる存在と話していました。逆に毎熊選手は前のほうで攻め上がって周りの選手とつながって仕掛けていくということが得意な選手なので、2人のサイドバックの組み合わせは今大会で新たな発見になっています。

GKは鈴木彩艶から代えるべきか?

 日本として見過ごせないのは、2-0になって試合展開的に「これで勝てるかな?」とクロージングに入ろうとした矢先のことでした。CKからヘディングシュートを放たれて、鈴木彩艶選手が弾いて、空中のボールをもう一度キャッチして処理しようとしたところで上田綺世選手と交錯するかたちでゴールに入ってしまいました。あのシーンを安藤さんはどうご覧になられましたか?

安藤 まずクリーンシートが今大会一度もないこと自体がチームの課題ですよね。必ず1失点以上してしまうのはチームとしてよろしくない。日本を代表するGKである以上は、なにも悪くないということはないと思います。悪い、悪くないじゃなくてなにが課題だったかというのを積み上げなければいけない。

 弾いた後も、彩艶選手は自分で処理にいきましたけど、その先にストーンのような役割を担っていた上田綺世選手がカバーに入っていて、上田選手はそのままクリアしようとしていました。だけどそこに彩艶選手が突っ込んできた状況でした。僕はGKの松永成立さんと本を作らせてもらった時に、そういう時は「キーパー!」って怒鳴るような声で避けさせなきゃいけないと聞いていました。記者席からなので声は聞こえてないですけど、実際に出ていたのかどうか。

安藤 アジアのコンペティション、世界のコンペティションを出ているという立場の重さがあるので、そこはなあなあで済ませてはいけないし、議論されるべきだと思います。
 もちろん彩艶選手だけのせいにせよ、GKが不安定であることは誰が見ても明らかです。おそらく次の対戦相手であるイランもGKのプレーを分析してくるでしょうし、どういうシチュエーションでエラーが起きたかを見てくると思います。そこで、今の日本代表にはもう2人、前川黛也選手と野澤大志ブランドンが控えています。ベンチに入っているのは前川選手なので、彼が第2GKだと思うのですが、このタイミングでGKを代えるということはあるのでしょうか?

安藤 もしも経験豊富な第2GKがいれば、代えると思います。ですが前川選手はキャップ数が少ないですし、ここでは代えられないと思うし、代えちゃいけないと思うんです。なぜかと言えばGKというポジションは別格なんですよ。疲れたから代えればいいということではなく、このGKに任せると決めたら任せ続けて乗り切らないといけない。しかも、次の準々決勝という山場で代えることは、経験豊富な選手でない限りは博打以外なにものでもないと思います。もちろん、出たら前川選手はがんばっていいプレーを見せてくれると思いますけど、この流れでは難しいと思う。森保一監督としては今大会で鈴木彩艶選手を育てて、そしてやり切るという意思があると思います。

 ここまでの経験を次のイラン戦で生かさなければいけない。

安藤 生かさなければいけないし、GKがコロコロ変わってしまうのはよくないので、今大会は我慢しなければいけないところはあります。彩艶選手にとって今は苦境だと思いますし、それを乗り越えられれば一皮剥けてその先にある確立された代表GKの座があると思います。

異彩を放った、復活のエース・三笘薫

 もう一つのトピックとしては、三笘薫選手がバーレーン戦の67分から初出場したことでした。怪我の影響もあって、最初は別メニュー調整でインドネシア戦の後に出てくるんじゃないかと言っていたら本当に出てきました。三笘選手のプレーを見て、実際にどうでしたか?

安藤 やはりみんな警戒しますよね。意識がそっちにいってしまう。意識を引きつけるだけでも重要なファクターで、そうすると真ん中や逆サイドが空く。三笘選手がボールを持った瞬間、バーレーンの選手は警戒して2人がかりでいってました。感じたこととしては、三笘選手の存在は絶対だというところと、今まで出ていなかったことによる試合勘の調整は必要なのかなと。ただ、この勝ちゲームである種の試運転ができたことはプラスで、次は中2日ですけど、彼は疲労が溜まっていないのでフル稼働してほしいですね。

 疲労は溜まっていないけど、ゲーム体力は落ちてしまっている。

安藤 そこはどんな一流選手でも(長い間試合から離れてしまうと)落ちてしまうというのは感覚としてあると思います。

 ここからイランとベスト8を戦うわけですけども、イランのアジア最強ツートップの一角であるタレミ選手がこのラウンド16のシリア戦で退場してしまったため、次の試合には出られません。アズムン選手はいるものの、日本にとっては追い風になるのかなと思っています。

安藤 それでも我々には上田綺世選手がいます。この大会でまたさらに成長していて、9番を与えられている選手です。大迫勇也選手の後継者がついに現れたと思って僕はかなり期待しています。イランのストライカーは強力ですが、我々には冨安健洋選手がいますから臆せず堂々と戦ってほしいです。

 冨安選手や板倉滉選手が相手のタレントを抑えた上で、上田選手がゴールを決めるというシチュエーションが非常に大事になります。

安藤 そのシナリオができているんじゃないかと、期待しています。

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