Taisei Iwamoto
リンクマン2.0へ。変わり続ける守田英正|森保ジャパン アジアカップ戦記 vsバーレーン
Writer / 安藤隆人
森保ジャパンで“不動の存在”だった守田英正。だが、アジアカップでは旗手怜央の台頭によって2試合連続でスタメン落ちを味わった。だが、緊急出場したバーレーン戦ではバランスをとりながら、積極的に攻撃に関与していく守田の姿があった。稀代のバランサーの貪欲な進化が、日本代表をさらに強くする。
チーム全体が見えてしまうゆえに
ライバル関係はそれぞれの選手の成長を促す。
アジアカップ・ラウンド16のバーレーン戦での守田英正のプレーを見て、改めてそのことを痛感させられた。
この試合、守田はスタメンではなかった。守田といえば、寄せのスピード、カバーリングの速さと正確性、そして豊富な運動量を武器に中盤のリンクマンとして攻守のバランスを司るボランチ。先のカタールワールドカップでも日本の中盤の要の1人として重要な役割を担った。
アジアカップでもグループリーグ第1戦、第2戦はスタメン出場。森保一監督の信頼の厚さを示したが、ここからライバルが一気に台頭してきた。
第3戦のインドネシア戦でスタメン出場した旗手怜央は、フィジカルの強さと攻撃への質の高いスプリントと足元の技術に加え、献身的なプレスバックを見せて攻守において躍動。チームとしても高い連動性を見せて、3-1の快勝につながったことで、旗手への信頼度は一気に増した。
これを守田はベンチから見つめていた。悔しさがあったかもしれない。だが、1月29日の練習後の取材の際に、旗手の台頭について問われるとはっきりとこう答えた。
「(怜央は)相当いい動きをしていましたね。アシストはつかなかったのですが、ゴールに結びつきそうなチャンスを作っていましたし、攻撃の際に相手の背中に入っていたので、相手の配置にもよりますが、そういったプレーは勉強させてもらいました」
この言葉はただの謙虚さから出たものではなく、自分のプレースタイルを理解した上で、今の日本代表のボランチとして必要なものと冷静に分析をしたからこその回答だった。
日本代表における守田は全体のバランスを見て、守備を第一優先に考えてプレーをする選手だ。だが、その一方で金光大阪高校時代や流通経済大時代はより攻撃的なスタイルだった。所属クラブのスポルティング・リスボンでも、攻撃的なプレーも求められ、高いレベルでそれを実践している。
守田は守備的なプレーしかできない選手ではない。攻撃的なプレーはできるが、チームに与えられた役割をきちんとこなすことに美学と自分の生きる道を感じている選手なのだ。
「僕は『役割はこれだ』と決められていたら、それに集中できます。(日本代表の)チーム内での僕の役割は、守備に穴を開けないとか、バランスを見る役割に寄る。それは僕の特性でチーム全体が見える分、どうしても(守備の穴やバランスが)気になってしまうのでやってしまうというものもあると思います」
“緊急出場”で見せた新しい姿
インドネシア戦の流れを踏襲し、ほとんど同じメンバーで臨むことになったバーレーン戦。守田はベンチで戦況を見つめていたが、36分に旗手が負傷をしてプレー続行が不可能になったことで、急遽ピッチに投入された。
この緊急事態にも、すぐにゲームに入り込んだ守田は、インドネシア戦の旗手のように遠藤航と連携して守備バランスを取りながらも、トップ下の久保建英と3トップの間のスペースに果敢に潜り込んでボールを引き出した。
1-0でリードして迎えた後半は攻撃のビルドアップの際に毎熊晟矢と中山雄太の両サイドバックを高い位置に押し上げて、冨安健洋と板倉滉の2CBと並んで3枚でボールを回しつつ、縦パスが入った瞬間に一気にポジションを上げてアタッカー陣をサポート。
79分に3-4-2-1にシステムが変わってからも、ウイングバックになった中山と毎熊が内側にポジションを取ると、すぐさま遠藤のポジションを見て三角形を作り出してパスコースを増やすなど、攻守に関与し続けた。
旗手から学んだことを、自分の元来のプレーにリンクさせ、アップデートした守田の姿がピッチにはあった。
試合後、守田は負傷した旗手の思いに配慮をしながら、台頭してきたライバルの存在にこう考えを述べた。
「自分のポジションが確立されていると思ったことはありません。それに僕の目的は日本代表がワールドカップで優勝することだから、いい選手が1人でも増えれば日本が強くなる。自分のポジションが脅かされるのは、チームとしても、僕としても大歓迎ですし、うれしいことなんです。その上で僕がポジションを奪うだけなので」
ライバルの存在を歓迎し、切磋琢磨することで自らの成長を手に入れる。守田がピッチの旗手から学んだように、筆者もピッチの守田からトッププロに必要な要素を学ばせてもらった。
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