浦正弘
新星SBの武器は、唯一無二の高さと適応力(関根大輝/柏)|Road to Paris~大岩ジャパンの俊才~
Writer / 難波拓未
U-23日本代表にとって、3月のU-23マリ代表戦とU-23ウクライナ代表戦は、パリ五輪アジア最終予選前、最後の強化試合だった。本大会への切符を懸けて戦うチームに入るために、選手たちは“最後のアピール”に奮闘した。「Road to Paris〜大岩ジャパンの俊才〜」では、特に存在感を示した選手に焦点を当てる。1人目は187cmの長身SB関根大輝だ。
(第1回/全3回)
187cmの高さで攻守に貢献
「当落線上の選手という自覚をもって、ここに来た」
そう語ったのは、右サイドバックの関根大輝だ。2023年9月、拓殖大の3年生ながら杭州アジア大会を戦うU-22日本代表に選出されて以来の代表戦で、持ち味の高さを余すことなく発揮した。4月の五輪最終予選のメンバー入りに向けて、大きくアピールしたと言える。
U-23ウクライナ代表戦、0‐0で迎えた48分だった。荒木遼太郎が右サイドからのCKを蹴り込むと、関根がニアサイドで合わせる。相手GKの上から跳躍力を生かした打点の高いヘディングシュートはクロスバーをたたいたものの、ファーで待っていた佐藤恵允が押し込んで先制に成功した。大岩剛監督が率いるU-23日本代表は前半に多くのチャンスを決められない展開が続いていたが、187cmの関根の“高さ”が均衡を打ち破るきっかけとなった。
大岩ジャパンの強みであるセットプレーで存在感を示せた価値は大きい。関根自身「自分の武器をアピールできて良かった」と手ごたえを口にした。
関根の高さは守備でも光る。
U-23ウクライナ代表の攻撃の起点は、サイドに張り出すウイングだった。日本の激しいプレスをかい潜ろうと対角のサイドチェンジを使ってきたが、関根が立ちはだかった。先発した最終ラインの中で最も身長が高い右サイドバックの関根がことごとく1対1の空中戦を制し、相手に起点をつくらせることなくチームの完封勝利に貢献した。
「相手が大外に張っているなかで、対角のロングボールは常に狙っていた。後半はそれでスローインになってしまったが、流れを切れるのはチームにとっても大きいと思うし、自分が使われている意味はそういうところにある。そういうプレーも見せられたのは良かった」
森保ジャパンは1月のアジアカップで右サイドバックがカバーするエリアから押し込まれる場面が少なくなかった。大岩ジャパンが臨むU-23アジアカップも同様の狙いをもつチームがいてもおかしくはない。
関根は攻撃ではセットプレーで価値を示し、守備ではサイドを守る壁として、このチームに欠かせない選手として大いにアピールしてみせた。
“前倒し加入”で身に付けた自信を胸に
約7カ月ぶりの代表戦。しかも、パリ五輪アジア最終予選前ラストの試合。ここでアピールできなければ最終予選のメンバーに名を連ねることが難しくなる。選手にとっては、勝利だけでなく、“最後のアピールの機会”というプレッシャーのかかる試合だったが、関根は「変に緊張することなく、すんなりと試合に入れた」と言う。
普段と同じようにプレーできたことには理由がある。それはJリーグでのコンスタントな出場機会だ。
2024年1月、2025年に加入予定だった柏レイソルに1年前倒しで加入することを決断。開幕戦で早速先発の座をつかむと、開幕から5試合連続フル出場を続けている(第5節終了時点)。
「レイソルに入ってJ1の強度でプレーしていることで、以前の代表戦よりも自分のプレーに余裕が出てきているし、周りも見られるようになっている。それが前倒しで加入した意味でもあり、それを狙って決断した」
当然、ただ出ているだけでなく、そのプレーも堂々としたものだ。
だから関根は、大岩ジャパンでも動じない。それどころか、彼自身の言葉にあるように、「周りも見られるようになっている」。そんなシーンを随所に見ることができた。
わかりやすいのは右サイドのコンビネーションだ。
内側から突き抜けるインナーラップ、タッチライン沿いを駆け上がるオーバーラップに加えて、サイドハーフを追い越さない後方支援と、まさに変幻自在。展開や状況に応じてプレー選択を変化させながら周囲と連係し、大岩ジャパンのストロングサイドとなった。
U-23ウクライナ代表戦のサイドハーフには、前半は左利きの山田楓喜(東京V)、後半は右利きの平河悠(町田)が入った。山田は味方を生かすタイプで、平河はドリブラー。利き足だけでなくプレースタイルの異なる選手と縦の関係を築く上で、それぞれの特徴をしっかりと把握し、息の合った連係で右サイドを推進していった。
「楓喜くんだったら大外でボールを持って、自分がランニングすることによって使ってくれるし、中へのカットインもしてくれる。悠くんだったら、縦に仕掛けられる。うまく2人の特徴を理解できていたし、常にサイドハーフがやりやすいような立ち位置を意識していた。1試合を通して、周りに合わせて動けていたと思う」
もちろん、自分が当落線上にいる自覚はある。だが、それと同時に、自他共に認める成果を手にした彼が発する言葉には自信がみなぎっていた。
唯一無二の高さ。攻守両面で発揮される戦術理解度と適応力。Jリーグで戦いながら日々確信を増す自信。パリ五輪アジア最終予選、そして本大会へ。大岩ジャパンの右サイドバックに堂々と名乗りをあげた関根は、日の丸を背負うその戦いの定位置をつかみにいく。
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