浦正弘
技術×自信で、今季のJリーグを席巻中(荒木遼太郎/FC東京)|Road to Paris~大岩ジャパンの俊才~
Writer / 難波拓未
U-23日本代表にとって、3月のU-23マリ代表戦とU-23ウクライナ代表戦は、パリ五輪アジア最終予選前、最後の強化試合だった。本大会への切符を懸けて戦うチームに入るために、選手たちは“最後のアピール”に奮闘した。「Road to Paris〜大岩ジャパンの俊才〜」では、特に存在感を示した選手に焦点を当てる。3人目はU-23ウクライナ代表戦でインサイドハーフを務めた荒木遼太郎だ。
(第3回/全3回)
日本のチャンスを生む受け手としての力
3月25日、北九州スタジアムのピッチに星が煌めいた。
金髪をなびかせながらインサイドハーフでプレーした荒木遼太郎(FC東京)のことだ。67分間の出場でチーム最多5本のシュートを放ち、U-23日本代表のチャンスのほとんどに絡んでいた。
U-23ウクライナ代表は中央を閉じる守備ブロックを敷いてきたが、狭いエリアは荒木の大好物だ。強気にパスを要求し、軽やかなターンで前を向き、ドリブル、パス、シュートで意気揚々とゴールに向かっていく。
14分、荒木が相手ボランチと左ウイングの間で鈴木海音(磐田)のパスを引き取ってターンすると、右サイドハーフの山田楓喜(東京V)に預ける。相手選手の視線が山田のドリブルに集まるなか、相手左サイドバックとセンターバックの間に広がったスペースを見つけて飛び込み、リターンパスを受けて右足を振り抜いた。惜しくもシュートは相手GKに阻まれたが、わずかに空いたスペースを見つける視野の広さと、動きながらでも正確にボールをコントロールできる技術を存分に発揮した。
荒木は自身のパフォーマンスを「結果を出せれば一番良かったですけど、そのなかでも攻守にわたってもっているものを出せた」と振り返った。
中盤で一緒にプレーした藤田譲瑠チマは「荒木は、パスの精度やうまくスペースでボールを受け取る技術が本当に高いので、自然と荒木にボールが入るシーンが多かった」と言及した。
3日前に戦ったU-23マリ代表戦はディフェンスラインから前線へのパスが通らず、ビルドアップに停滞感が漂っていた。当然、マリ戦とウクライナ戦の2試合では出場メンバーの組み合わせも、対戦相手のスタイルも異なるため、手放しで「荒木のおかげ」とは言えない。だが、荒木の受け手としての存在感が攻撃にリズムを生み出したことは間違いなかった。
自信満々のプレーがチームに影響をもたらす
今回の強化試合は、荒木にとって2年ぶりの代表活動であり、五輪アジア最終予選前の最後のアピールの場だった。しかし、背番号13は「モチベーションはどの試合もあまり変わらずにやっているので、いつも通り臨めた」と全く気負いはなかった。
なぜ、淡々とプレーできたのか。それは、自信があったからだ。
2024シーズンから期限付き移籍で加入したFC東京で、荒木の存在感は異質なまでに際立っている。
開幕戦でいきなり2ゴールを奪い、第2節と第4節でもゴールをゲット。トップ下という彼が最も得意なポジションで起用されていることや、ある程度の自由を与えられながらノビノビとプレーできていることで荒木の能力は最大化され、誰の目にも明らかなほど大きな活躍を見せている。
U-23ウクライナ代表戦では、相手が中央を堅く守っていたなか、センターバックの馬場晴也にジェスチャーを交えながら強く要求する場面があった。その姿は「狭いスペースでもガンガン縦パスを入れてこい!」といったメッセージが聞こえてくるようでもあり、自分が局面を打開できる自信があったことの表れだったように感じられた。
実際に荒木は、Jリーグ開幕前にメディアでこう語っていた。
「早く試合に出たい。出たらやれる自信はある」
荒木は今、有言実行、その言葉をピッチで表現している。
パリ五輪アジア最終予選は、どのチームも死に物狂いで本大会への切符を狙って臨むため、これまで以上に厳しい戦いが予想される。
日本は1996年のアトランタ五輪から7大会連続で本大会に出場しているが、アジアのレベルも上がっているなかで、簡単に突破できる戦いではない。
当然、試合のなかで、苦しい時間帯や状況もあるだろう。そんな時、荒木のあふれんばかりの自信はチームに好影響をもたらすはずだ。荒木が中央で堂々と立ち振る舞うことにより、それを見た味方は「自分もできる」「やってやろう」と思える。荒木は熱く吠えて仲間を鼓舞するタイプではないが、自信満々にゴールに向かっていく姿そのものが、チーム全体をけん引するパワーになる。荒木が中央で発する眩しいほどの輝きが、大岩ジャパンを本大会に導く。