中村敬斗はエース・三笘薫を超えられるか?|森保ジャパン アジアカップの論点

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日本代表

2024.01.13

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中村敬斗はエース・三笘薫を超えられるか?|森保ジャパン アジアカップの論点

舞野隼大

Writer / 舞野隼大

2024年1月1日、日本代表史上初となる元日決戦が東京・国立競技場で行われた。アジアカップに向けた貴重な実戦の場で「新戦力の発掘」と「戦術浸透」をテーマに、日本代表が5ゴールを挙げる快勝で61,916名のファンを沸かせた。この試合の2ゴール目を決めて、日本代表により勢いを与えた男が中村敬斗だ。日本の左サイドで一際強い輝きを放つ三笘薫というライバルがいるが、中村自身も負けじと自らの特徴を示し、躍進を印象づけている。
(第3回/全3回)

無得点に終わった前半。「僕だったら詰めていた」

5戦5発──。昨年3月にA代表デビューを果たした中村敬斗(スタッド・ランス/フランス)は、三笘薫(ブライトン/イングランド)や伊東純也(スタッド・ランス/フランス)らを差し置いて今や第2次森保ジャパンで最多のゴール数を挙げている。

シュートのほとんどは1タッチないしは2タッチ。いとも簡単にネットを揺らしてみせイメージが強い。

中村のゴールを語る上で重要なのは、シュートの精度ではなくオフ・ザ・ボールの動きだ。

元日に行われた国際親善試合のタイ代表戦の前半は、スコアレスで終了。日本は主導権を握り続け、立ち上がりから決定機を多く作ったものの得点に至っていなかった。

「たとえば右サイドからのクロスにファーで詰められなかったシーンが2、3回あって、『僕だったら詰めている』と思っていた」

ベンチから前半の戦況を眺めていた中村は、そう感じながら後半の頭からピッチに立った。

所属元のスタッド・ランスでは伊東ら右サイドの選手がボールを持った時、「常に(ファーやゴール前へ)入るというのは意識している」と明かす中村に最初のチャンスが訪れたのは61分。ボールを持った毎熊晟矢(セレッソ大阪)が右サイド深い位置に侵入すると、「マイクくんと目が合っていたので、クロスが上がる前に『絶対にそこへ来る』というのはわかっていました」とボックス内中央へ顔を出し、グラウンダーのクロスに誰よりも早く反応。ダイレクトで放ったシュートはポストに惜しくも阻まられ、得点とはならなかったが「あれはリーグ・アンで最後に点を取ったかたち(第17節ル・アーヴルAC戦/1-0)とすごく似ていた」と点を決めるため、自らがこだわる動きをこの試合でも表現してみせた。

そして、待望のゴールは72分に生まれた。中村のパスに抜け出した佐野海舟(鹿島アントラーズ)が中央へ折り返すとフリーになっていた南野拓実(モナコ/フランス)が反応。南野のシュートは相手GKに弾かれたが、その先で詰めていたのが背番号13だった。

「もしかしたらこぼれるかもと思って、一応走っていたら僕のところにきた」。

パスを出した後も足も思考も止めることなく万が一に備え、ゴール前へ顔を出していたことで生まれた1点。何気ないかもしれないが、この心がけによって中村がフィニッシュを迎える際にはすでに勝負は決している。だからこそ彼は得点を次々と決めることができている。

アジアカップで活躍し、さらに上のステップへ

中村は、今月開幕するAFCアジアカップのメンバーにも名を連ねた。ドリブルで敵陣を切り裂く三笘も日本代表に招集されているが、12月21日のクリスタル・パレス戦で左足首を負傷し、どこまでプレーできるか不透明。そうした状況を考えると、中村が左のファーストチョイスとして有力になってくる。

特にグループステージでは引いて守られる戦いが多くなりそうだが、三笘とは異なる特徴を持った中村のクロスへ飛び込んでいくプレーやゴール前で詰める動きは、日本の大きな武器にもなり得る。このアジアカップは、「毎回の活動で生き残りを懸けてやっている」と自称する中村がさらに先のステージへ上り詰めるための重要な大会にもなる。

それに中村は「今のところスーパーゴールやペナルティエリア外からのシュートは決めていない」と言えば「みんながつないできて、あとは決めるだけですけど、僕が逆に(チャンスを)作っていくことがこれからの課題」とゴールのバリエーションやプレーの幅を広げている最中でもある。

2023年はA代表デビューにリーグ・アンへの初挑戦など変化の大きな1年となった。2024年はさらなる成長と結果を残し、日本にとって欠かせない存在になれるか。新しい1年を占う意味でも、アジアカップでの活躍が求められる。

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