Taisei Iwamoto
なぜ守田英正-久保建英ラインは機能しなかったのか?|森保ジャパン アジアカップ戦記 vsイラク
Writer / 舞野隼大
悪い意味で、周囲の予想を覆す結果となった。アジアカップのグループステージ第2節に臨んだ日本代表は、イラク代表に1-2で敗戦。これまで、猛威を奮っていた日本の攻撃力もこの日は鳴りをひそめ、コーナーキックからの1点に留まってしまった。圧倒的攻撃力を誇る森保ジャパンはなぜ、ゴールを重ねられなかったのか。チームの中軸を担う、守田英正の言葉から敗因を紐解く。
もっとタケに入れるべきだった
優勝候補の筆頭に挙げられる日本代表が、グループステージでイラクにまさかの敗戦を喫した。
6月に行われたキリンチャレンジカップ2023のエルサルバドル戦で6-0の快勝を収めて以降、ドイツ代表などに大量得点で勝利を重ねてきた日本。その連勝記録は「10」で止まった。ゴールもコーナーキックから決めた1点のみと、勢いに乗っていた攻撃も鳴りをひそめてしまった。
「もっと、タケにボールを入れるべきだった」
日本から金星を挙げ、試合後のミックスゾーンで音楽を爆音で流し歓喜するイラク代表の選手たち。それとは対照的に悔しさを滲ませる守田英正は、“相棒”である久保建英を生かしきれなかったと話す。
いまや日本代表の中核を担う選手となった守田は、このイラク戦でも遠藤航と4-2-3-1のダブルボランチを組み、トップ下には久保が配置される布陣となった。
「タケはどれだけ狭いスペースだろうとボールを失わない。そこにさえ配球してあげられたらチャンスになる」と全幅の信頼を置く守田は、久保がいかに前を向いてプレーできるかを意識。2人の連係が日本の好調を支えていた。
だが、守田は前につけるプレーをイラク戦では躊躇していた。
「ミスが増えたり、縦パスで引っ掛けてしまうと、それ(前へのパスコース)が徐々に見えなくなってしまう。『入れていいものなのか』と躊躇してしまった。逆に出し手は入れられるけど、受けた先が(次のプレーへの選択肢が)なかったらちょっと入れにくいとか、いろんな迷いが出ていて、僕のなかでもそういう戸惑いありました」
パスを引っ掛けてしまってはカウンターを食らい、ピンチを迎えるシーンが何度かあった。ミスをしてしまった後のリスクが頭にこべりつき、雑念が生まれてしまうといつものプレーができなかった。試合後、冷静になった守田のなかに残っていたのは、「もっとシンプルにつけるべきだった」という後悔だった。
日本以上に巧みだったイラクの試合運び
なぜ、普段どおりのプレーができなかったのか。その要因は自分たちにあったのか。それとも、相手の守りにミスを誘われたのだろうか。その疑問を守田に投げかけると、「両方だと思います」と答え、こう続けた。
「本来、僕たちが持っているパフォーマンスを100%出せたかと言われれば、そうではないと思います。ただ、相手の今日のサッカーは想定していたなかでもやられていたので、相手のほうが巧みに試合を運んだ結果でした」
対するイラクは、チャレンジャーとして立ち向かい120%以上の力をこの試合で発揮してきた。一つ一つの局面においても「1対1で負けないとか、セカンドボールを早く回収して攻撃につなげる質やデュエルでシンプルに負けていた」と、そうした細かい差が勝敗という大きな差になって現れたと守田は言う。
受けて立つ側としての堂々とした姿勢、ミスを恐れない勇敢さもこの日は欠けた。中東開催によって大勢が駆けつけたイラクサポーターの大合唱で、ピッチ上のコミュニケーションもままならなかった。
日本の強力な武器である守田と久保のラインは、2人の連係を発揮する以前の根本的なところから見直す必要があった。
「試合はまだありますし、道はある。自分たち次第で(グループステージの)突破を決められますし、次は次で切り替えてやるべきです」
落胆している暇はない。大騒ぎするイラクの選手たちには目もくれず、守田の視線はすでに次のインドネシア戦を見据えていた。