浦正弘
広島・大迫敬介が特別な応援歌“日本代表ver.”を聞いた夜|青に染まった新ホームスタジアム
Writer / 小津那
Editor / 北健一郎
6月11日、FIFAワールドカップ・アジア2次予選でシリア代表と対戦した日本代表。この試合は、今年2月に開業したサッカースタジアム「エディオンピースウイング広島(Eピース)」で初めて開催された日本代表戦となった。サッカー界にとっても歴史的な1日となったこの日、国を背負って戦うことにひときわ特別な思いを抱いていたのが、森保一監督と大迫敬介、共に広島を“ホーム”にしてきた2人だ。
指揮官・森保一監督の涙
キックオフ前、エディオンピースウイング広島(Eピース)に君が代が響く。空を見上げて国歌を歌う森保監督は、普段以上に目を潤ませていた。
指揮官にとって広島は、選手として14年間プレーし、引退後の指導者キャリアをスタートさせた特別な地だ。そして日本代表戦として初開催となったEピースは、2012~2017年にサンフレッチェ広島を率いた際、森保監督が建設の実現に深く関わっていた場所でもあった。
この場所にサッカー専用スタジアムが建設されるのは、広島でサッカーに関わる人たちにとって長年の悲願だった。早期建設を求め広島県サッカー協会を中心に署名を集めるなか、当時広島を指揮していた森保監督も積極的に協力した。そして2012年、2013年、2014年とリーグ3連覇を達成して広島でのサッカー人気を高め、スタジアム建設構想を一気に進めるきっかけをつくった。
「まちなかスタジアム」をコンセプトに、Eピースは広島市中心部に建設された。原爆ドームなどがある平和記念公園近くに位置することから「恒久平和と、夢や希望をもって明るい未来へ羽ばたく」という願いが、スタジアム名に込められている。
「ここ広島で試合があって……エディオンピースウイング広島の近くに平和公園や原爆ドームがあるなか、歴史に触れていただいて、平和のことを考えていただける機会になればうれしいです」
2004年7月、スロバキア代表戦以来、20年ぶりに開催された広島での代表戦。森保監督は前日会見で、広島で行われる試合に向けて熱い思いを語っていた。
自らも建設実現に動いた場所に、日本代表の指揮官として凱旋する。長年の悲願を叶えて込み上げた思いが涙となって目にあふれた。
本拠地で日の丸を背負った大迫敬介
ゴール裏から何度も繰り返された大迫コール。Eピースではお馴染みの光景だが、この日は違った。
広島に所属するGK大迫敬介が、日本代表GKとして先発入り。「自分たちのホームスタジアムとはいえ、違った雰囲気で楽しめました」と“ホーム”での代表戦を喜んだ。
ゴール裏からの大迫コールには「もちろん(聞こえていた)。やっぱり、強い味方がいるな」と感謝した。普段のパープルではなく、ブルーが集ったスタジアムからは後半、広島サポーターが普段歌うチャント“Hiroshima Night”の替え歌も響いた。
「あの応援歌を日本代表として聞くのは初めて。このスタジアムで歌ってもらえたのはすごくうれしかった」
そう笑顔を見せた大迫は、「広島だと応援してくれるのは広島サポーター。日本代表戦はテレビも含めて日本中の方々が応援してくれる」という違いにも「楽しめた」と、特別な瞬間を味わった。
1月のアジアカップで守護神を務めた鈴木彩艶や、同試合で76分に投入された谷晃生、そしてポルトガルで活躍する中村航輔など、GKのポジション争いが激化している。
前半19分には、自陣でのビルドアップから大迫が左サイドにいた中村敬斗に展開すると、このパスからカウンターが始まり、最後は久保建英→堂安律でネットを揺らす。GKとして攻撃面でもアピールした。「今日みたいなゲームは自分の存在感を示すのは難しい」としつつも「ゴールキックからゴールが入ったシーンもありましたし、自分の課題でもあったので、そこから決まったのはポジティブにとらえています」と振り返っている。
「ただ、もっともっと質は上げないといけません」
怪我を乗り越えて迎えた7カ月ぶりの代表戦が本拠地でのスタメンに。様々な思いを噛み締めながらピッチに立った大迫が、この日を糧にさらなる歩みを進める。
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