難波拓未
無料公開で日本サッカーを変革!?『キャプテン翼』を背負う使命感|Jクラブを凌駕する、南葛SCのYouTube革命
Writer / 難波拓未
Editor / 北健一郎
内側をさらけ出すことで得られるものがある。密着ドキュメントを通して着実に“うねり”をつくる南葛SCが目指すものとは。そこには目の前の昇格だけではなく、日本サッカーを変える挑戦があった。『キャプテン翼』を背負う南葛SCの使命感や、無料公開という情報発信へのこだわりとは。関東リーグで無類の“存在感”を発揮するクラブに焦点を当てる『Jクラブを凌駕する、南葛SCのYouTube革命』の全3回のうち2回目は、岩本義弘GMインタビュー後編をお届けする。
(第2回/全3回)
観客数&ライブ配信視聴者が飛躍的に増加
──密着ドキュメント開始後は試合ハイライトの平均視聴回数が飛躍的に増加しています。試合への関心が高まっている実感はありますか?
それこそ今シーズンは5月5日の奥戸総合スポーツセンター陸上競技場での最初の試合に2055人の方に来ていただきました。正直、プロモーションにあまり注力できていなかったのですが、予想以上に多くの方に来場していただき、YouTubeの影響もあって南葛を取り巻く輪が大きくなっていることを実感しました。試合ハイライトの再生数だけではなく、試合のライブ配信の視聴者数も飛躍的に増えています。
ピッチ上では相手を圧倒できるチームを目指し、事業面では葛飾および下町の人たちを巻き込んで、大きな渦をつくることが大事。YouTubeも含めて、今はそれが想定以上にできてきているのかなと感じています。
──選手密着の1本目は玉城峻吾選手でした。稲本潤一選手や今野泰幸選手など元日本代表選手がいるなか、玉城選手を最初に選んだ狙いを教えてください。
稲本や今野を出演させても、ちゃんとしたコンテンツでなければ全然伝わらないし、数字も伸びません。重視しているのは、数字を残すだけではなく、しっかりとファンを獲得することです。もちろん最初は元日本代表選手や元Jリーガーを取り上げる意見も出ましたけど、まずは風間さんのサッカーをYouTubeを通して伝えることをテーマに設定したので。そういう意味では玉城は筑波大で風間さんの教えを受けていたし、チームの中心メンバーなので適任だったんじゃないかなと。勘所がよくて愛されキャラでもあるので、 1回目の密着にはふさわしかったかなと思っています。
元Jリーガーが取り組むサッカー選手と会社員の両立|南葛SC密着ドキュメント #3
──選手だけじゃなく、チームのマネージャー密着回もありました。
木幡柊冶マネージャーの回は切り抜き動画もすごく伸びて、 いろんな人に届きました。裏方は普段あまり注目されていないかもしれませんが、サッカーに関わる人を増やすためにはすごく役立つ内容だったなと思っています。今後もピッチ外も取り上げていきたいです。
「また行くぞ、前に進むぞ」風間監督が選手に伝えたメッセージ|南葛SC密着ドキュメント#21
──ロッカールームをつくる上でのこだわりを含めて日々の仕事の様子がわかる、サッカー業界で働きたい人の参考になる内容でした。
サッカークラブで働いている人のことを業界以外の人に知ってもらえる機会は多くありません。地上波の密着系の番組だと「裏方は多くの人に見られない」という理由で放送されないことが多いですが、自分たちのYouTubeチャンネルだったらできるし、今はそれがハマれば拡散されるアルゴリズムでもあるので、すごくよかったかなと思います。
実際にクラブ内で一緒に働いている人もあそこまでこだわってやっていることは知らなかったんです。全選手ごとにテーピングの準備を変えるとか、選手本人からリクエストされるのではなく普段の様子を観察していて臨機応援に対応するとか……。専門学校を卒業してから5年で、あのレベルまでやれることは素晴らしいと思いました。
日本サッカーを変える、オンリーワン&ナンバーワンに
──風間監督は指導者がドキュメントを見てくれていると言っていました。
1本目がすごい勢いで拡散された後、実は風間さんから「これを無料公開するのは、出し過ぎなんじゃないの?」と言われたことがあったんです。でも、「南葛のためだけだったら、そこまでやらなくてもいいかもしれないですけど、風間さんが南葛の監督になったのはチームを昇格させるためだけじゃなく、日本のサッカーを変えるためにやるんじゃないですか」と伝えました。
例えば、小学生や中学生が自分のチームのコーチに「YouTubeでこういうのを見ましたよ」と言えるくらいのものを出していく。日本サッカーを変えるためなら、出し惜しみはおかしいと。風間さんはすぐにわかってくれて、先ほど言ったように相手が全部わかっていても圧倒するという方向性がより強固になりました。
無料公開することでファンが増えるし、結果的に収益にもつながるし、南葛SCの価値形成にもつながります。サッカークラブはJリーグだけでも60クラブあり、Jリーグを目指しているクラブを含めると200弱になるので、J2やJ3でもみんなの目に届かないようなクラブはたくさんある。『キャプテン翼』を背負っている我々としては日本サッカーを変えるチャレンジを本気でしないといけないと思っています。
──今後のビジョンを教えてください。
長期的な視点になりますが、Jリーグに昇格できた時、「60分の1にはなりたくない」という思いが強くあります。オンリーワンであり、ナンバーワンになりたい。そのために密着ドキュメントなど南葛にしかできない発信を今後も続けていきたいです。