NECナイメヘン
【単独インタビュー】加入直後「意外とできた」→数カ月ベンチ外→22試合連続先発。なぜ異国の地で居場所を確保できたのか?|佐野航大・オランダでの飛翔
Writer / 難波拓未
Editor / 北健一郎
19歳でのオランダ挑戦は前途多難なスタートだった。しかし、自己成長への希望を捨てることはなかった。高卒1年目に岡山で期待を信頼に変えて一気に主力選手へ駆け上がった向上心と反骨心を胸に、オランダでも後半戦に定位置をガッチリと確保。なにを感じ、なにを考え、どう戦ってきたのか。スポンジのような吸収力は欧州でも健在だった──。
(第2回/全3回)
出られない悔しさを練習にぶつける
──リーグ戦初先発は1月21日のホーム・トゥエンテ戦。その後シーズン終了まで先発出場を続けました。
最初は途中出場で短い時間プレーすることが続いていましたけど、10月くらいから出られなくなりました。「なんで出られないんだろう?」と思いながらずっと練習していて、練習でのプレーはけっこうよかったのに、その週末の試合に途中出場でも出られない。悔しかったけど、それが今の実力だと捉えました。カップ戦は最初から長い時間プレーしていたので、(リーグ初先発の前に)公式戦に慣れることができていたのは大きかったです。
──試合に出られない時期はもどかしかった?
試合後だけですね。もう本当に一瞬。試合後に「俺が出たらやれたのに!」みたいな感情はありましたけど、それを誰かにぶつけても得をしない。悔しさを練習にぶつけていたので、(出られない時期を)苦には感じなかったです。
練習で自分のプレーをしっかり出すことができれば監督も見てくれるし、言葉は伝わらなくても、態度や立ち振る舞いはわかると思うので、コミュニケーションが取りづらくても姿勢で見せていました。
岡山で磨いたドリブルを武器に
──木山監督が当時サイドで起用していた佐野選手について「最終的には真ん中でプレーする選手。いつか海外でやる時にドリブルができると本当に大きな武器になる」と言っていました。岡山での経験が生きた瞬間はありましたか?
振り返ると、木山さんの言葉は本当にその通りだなと思いました。オランダはプレースピードが速くてオープンな展開が多い分、相手と簡単に入れ替われるし、その回数が多い。ドリブルでかわせることは本当に武器になりました。
岡山にいた時はサイドでのドリブルがメインだったので、中央でドリブルが強みになるイメージがあまり湧かなかったんです。日本だと目の前の相手を抜いても、カバーがいて決定的なチャンスにはなりにくかった。でも、オランダは個々の局面で1人を剥がせば、すぐにCBと1対1になるし、一気にチャンスになる。木山さんには本当に感謝しています。
──映像を見ると、体の線が少し太くなったと感じました。
筋トレの量がシンプルに多くなりました。岡山では週に1回でしたけど、今は多い時に週に3回、上半身も下半身も鍛えています。体重は3、4キロくらい増えました。
成長した得点関与と向上させたい守備
──オランダ1年目は半年で6ゴール3アシスト。ベストゴールを選ぶとしたら?
一番キレイに決まったのは、ホーム・フェイエノールト戦のゴールですね。左サイドからカットインしてシュートを打つ形はずっと練習していたので、決まった時はうれしかったです。でも、試合に勝てなかったので喜びは半減でした。カンブ―ル戦やPSV戦は自分のゴールで勝てたのでうれしかったです。
──フェイエノールト戦のゴールは低くて鋭いミドルシュートでした。元オランダ代表GKのヤスパー・シレッセン選手(6月19日にスペイン1部ラス・パルマスへの移籍が決定)などレベルの高いGKと練習している成果が表れた?
甘いコースや緩いボールを蹴ると、全然入らない。だからこそ、シュート練習はめっちゃやりました。シレッセンもそうだし、セカンドGKもオランダの世代別代表だった選手で、すごいGKを相手に恵まれた環境でシュート練習できていると感じています。
これまではシュートをふかすことが多かったので、抑えの利いた速いシュートをGKが取れないコースに打つことにフォーカスしてきました。筋力強化がシュート力向上にもつながっていると思います。
──岡山時代と比べて、サイドからゴール前中央に入っていく回数が増えた印象です。
それはすごく意識的にやっていました。ゴール前に入っていく回数やゴール前でボールを供給する回数は劇的に増えたと思います。岡山の時はウイングバックをやっていてクロスをヘディングする場面がほぼなかったですけど、オランダでは頭で2点を決めることができたし、それ以外もクロスを頭で合わせるシーンがありました。ウイングはボックス内に入っていくことが求められますし、相手のカウンターを防ぐために自陣に戻らないといけない。上下動を繰り返しながらゴール前に入っていく回数を増やすことはキツかったですが……(苦笑)。
──左右のウイング、ボランチ(インサイドハーフ)、トップ下でプレーしてきましたが、最もやりやすいところは?
ボランチなのかなと思いますけど、得点を取れるのはウイングやトップ下。自分でも本当の適正はよくわかっていないんです。でも、最も磨きたいのは[4-3-3]のインサイドハーフ、いわゆる“8番”ですね。
──“8番”で輝くために、どんな力を伸ばしたいですか?
まずは守備力です。強度を出してボールを奪い取るためには、もっとフィジカルを付けないといけません。考えるところや見るところは意識的にやっていますけど、そこもまだまだ。事前にいい準備をすることや、いいポジションを取ることは模索し続けます。