株式会社S・K・Y/ファジアーノ岡山
【単独インタビュー】パリ五輪経由でA代表へ。岡山が生んだワンダーボーイが見据える先|佐野航大・オランダでの飛翔
Writer / 難波拓未
Editor / 北健一郎
約半年で6ゴール3アシスト。チームをカップ戦決勝に導くゴールを決めるなど結果を残し、オランダ全域で存在感を強めてきた。念願だった欧州挑戦1年目を終えた今、なにを思うのか。そして見据える先とは──。
(第3回/全3回)
オランダも岡山も「勝ち馬に乗った気分」になれる
──オランダに来て、驚いたことを教えてください。
スタジアムはすごかったです。サッカー専用スタジアムばかりだし、小さいスタジアムでも祭りみたいに盛り上がる。ナイメヘンの観客数は約1万2500人なんですけど、歓声の迫力は本当にすごいです。
──岡山の本拠地であるシティライトスタジアムはアットホームでいい雰囲気ですけど、それとは違うよさ?
サポーターのリアクションがよりダイレクトに伝わってくる感覚ですね。オランダ人は思ったことをすぐ口にするんで。ダメなプレーをしている時はブーイングが来るし、いい時はとことん盛り上がる。そういうところは海外ならではですね。
──自分のプレーで一気に盛り上がると、モチベーションがさらに上がりますよね。
なんでもできちゃうというか、勝ち馬に乗った気分になりますね。でも、ファジアーノにいた時もその感触はありました。負けている時もしっかりと応援してくれるので、「全然取り返せるぞ!」という気持ちでプレーしていました。
──海外は練習で削り合うほど激しくアピールすると聞きますけど、実際はどうでした?
悪質な感じはあまりないですね。たまに激しいタックルが来るんですけど、それは自分のプレーにイライラしているからで、試合に出るために同じポジションの選手を削るとかはないです。でも、バチバチとやっていますよ。
来季は10ゴール7アシスト
──半年で6ゴール3アシスト。来季の目標を教えてください。
やっぱり1年を通してプレーしたい、しないといけないと思っています。それに向けたアピールという意味では、半年で6ゴールは悪くないですけど、10ゴールは決められたと思うくらいチャンスがありました。
なので、来季は10ゴールが1つの指標になると思います。自分のスタイル的にアシストも伸ばしていきたいので、10ゴール7アシストできたら最高です。ただ、目の前の試合でどうやって点を取るかだけを考えてやっているので、あくまでも数字の目標は目安ですね。
──海外に行って、よりゴールやアシストへの意識が強くなりましたか?
数字を残せば価値が上がるし、より多くの人に自分のプレーを見てもらえる。ゴールとアシストが自分の価値を高めることは日本と同じだけど、こっちだとそれがダイレクトにスカウトに伝わり、クラブやファンに届く。確かに数字はより強く意識するようになりました。
──結果を残すたびにチームメイトの信頼が増していった感覚があったのでは?
次第にパスが出てくる回数が増えました。最初は簡単なパスばかりだったけど、シーズン終盤は無理なボールでも来るようになりました。自分を頼ってくれていることの表れだと思うし、うれしかったですね。
欧州1年目を終えて、描くビジョン
──パリ五輪に向けて。大会直前のアメリカ遠征でU-23日本代表に初選出されました。
最初は海外組だけでの調整で、気づいたら試合というくらい短く感じました。でも、このタイミングで選ばれて試合に出られたこと、自分のプレーを見せられたことは大きかったと思います。短い期間でもやれることはやってきました。
──U-20W杯以来の代表戦でした。当時とはプレーするカテゴリーが変わりましたし、感じたことも違ったんじゃないですか?
集まっている選手はうまくて特徴のある選手が多く、1つひとつのプレーのレベルが高かった。パスやポジショニング1つとっても、当時と比べると自分も周りも質が上がったし、レベルの高い集団のなかでもっと違いを見せられる選手になっていきたいです。
──以前、将来はプレミアリーグでプレーしたいと言っていました。より近い場所でプレーするようになり、夢から目標に変わりましたか?
プレミアリーグでプレーしたい気持ちは変わりません。やっぱり見られる回数や注目度が違うし、目の前にあるCLやELの出場権を勝ち取ってそこで活躍したい。そうすれば、プレミアリーグへのステップアップも夢ではないと思います。ヨーロッパの選手はW杯と同じくらいCLやELに懸けているし、ヨーロッパに来てからはCLとELの価値の高さを感じる。まずはCLで活躍できる選手を目指します。
──A代表も目指す場所だと思います。森保ジャパンにはオランダリーグ所属の選手が多いです。
チームメイトの航基くんが選ばれていることは自分にとっても大きな意味をもつのかなと思いますね。ポジションやタイプは違うけど、結果(公式戦15ゴール1アシスト)を残して選ばれたので、やっぱり見られているんだなと。お兄ちゃん(海舟/鹿島)とも一緒に日の丸を付けてプレーしたいです。
「子どもたちに夢を!」を胸に秘めて
──岡山サポーターをはじめ日本からの応援は届いていますか?
やっぱり岡山にいた時のほうが届いていましたね(笑)。試合映像を全部見られるわけではないと思うし、結果を残さないとメディアに取り上げられませんから……。
でも、知り合いからは自分のユニフォームを着てCスタ(シティライトスタジアム)に行っているサポーターの写真が送られてきたことがありました。1年前に移籍したのに今も着てくれていると知り、素直にうれしかったですね。
U-23日本代表に選ばれた時は応援メッセージが届きましたけど、やっぱりもっと結果を残して盛り上げていきたい気持ちは強いです。
──6月から佐野兄弟でスタートしたオンラインサロンでは、どんなことを伝えていきたいですか?
ファンに声を届けてもらうだけでなく、自分の声も届けていきたいし、いろんな形で交流していけたらなと思います。「ヨーロッパでこういうふうに楽しく生きているよ」って発信したり、ラフにやっていきたいです。
──6月下旬にはCスタでサッカー教室を開催しました。
岡山を離れましたけど、クラブ理念の「子どもたちに夢を!」は本当にいい言葉だなと思い、今も心のなかにあります。自分も小さい頃にファジアーノから夢をもらったので、今度は夢を与えたいし、与え続けていきたい。そういう思いがイベント開催の根底にありますし、これからも「子どもたちに夢を!」を体現していきたいです。
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