憲剛と中西、山内翔が出会った2人の指導者|進化するN14中西メソッド 筑波大で始まる技術革命

本田好伸

大学サッカー

2024.01.22

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憲剛と中西、山内翔が出会った2人の指導者|進化するN14中西メソッド 筑波大で始まる技術革命

本田好伸

Writer / 本田好伸

異例とも言える、大学3年でのヴィッセル神戸内定。期待を背負った山内翔は順調にキャリアを重ねてきたが、4年生を迎える直前、壁に直面した。中村憲剛が課題を提示し、中西哲生が解決策を授けた。筑波大のキャプテンとなった山内が過ごした8カ月。関東大学リーグMVPをつかむまでの過程に、一切の妥協はなかった。
(第4回/全5回)

編集協力=田中達郎、ウニベルシタ

中村に言われた言葉と中西に師事した日々

山内翔は、名実共に関東大学ナンバーワン選手となった。

しかしその8カ月前、筑波大で4年生を迎える直前、彼はキャリアの岐路に立たされていた。転機となったのは2人の指導者、中村憲剛と中西哲生との出会いだった。

「このままではそこそこの選手で終わってしまうよ」

2023年3月、デンソーカップで関東選抜Aのメンバーに選ばれた山内は、プレーオフ選抜に2-5で敗北し、そのチームを率いていた中村からそんな言葉をもらったという。「でも、頑張らないといけないと思っても、何を頑張ればいいのかわからなかった」。3年生ですでにヴィッセル神戸の内定を得ていたが、順風満帆ではなくむしろ苦悩の連続だった。

「2年間でプロに向けた準備と、筑波大で結果を出さなければいけない。そのバランスを取るのはすごく難しかった。憲剛さんからも『学年が上がれば、自分に何か言ってくる人も少なくなる。自分の中で基準を上げて厳しく律しないと成長はないよ』と言われました」

そんな時に出会ったのが、中西だった。「哲生さんに出会っていなかったら、改善することなくプロになっていたと思う。本当に出会えて良かった」。好機を得た瞬間だ。

「利き足の右ではボールを取りにいける一方で左足が出せていないことや、プレー中に肩が下がる姿勢の癖がありました。今までそんなことを気にもしていなかったので、指摘された時は『どうすればいいんだ』と思っていましたけど、質問すればトレーニングや改善方法を教えてくれました。それを毎日継続したことで少しずつ変化が出て、驚きましたね」

筑波大の中で、山内は誰よりもN14中西メソッドに忠実だった。「一番意識したことは姿勢と呼吸」。まさにこの技術理論の根幹だ。山内はサボらなかった。

「毎朝、起きたら教わったことをすぐにやりました。できることは全部。その結果が週末の試合で出たかを振り返って『来週はこうしよう』と計画して。今までは主観的に『なんかいい感覚だ』『ターンがうまくいかない』といった感じだったのが、『肩が開いていないからターンできていない』とか、言語化することで原因がわかるようになりました。悪い時の直し方やいいプレーができた理由を言葉にできるようになったのはすごく良かった」

できたプレーがなぜできたのかを理解できるようになり、偶発的ではなく、練習で獲得した技術が、試合で使える自分の“スキル”として再現できるようになった。

第19節の中央大戦で見せたプレーは、超大学級だった。

2-2で迎えた63分、右サイドの加藤玄が預けたボールをダイレクトで刺した1本の縦パス。姿勢と体の開き具合、そして正確なインパクトで、田村蒼生へと預けた。結果的に田村がエリア内で倒されて獲得したPKが、この試合の決勝点へとつながった。

「まだまだ完璧にできていないですし、日々良くなっていますが、もっともっと良くなると思っています。とりあえず全部やってみて、いいなと感じたら日々の練習メニューに入れる。重心についても、自分にとってのベストな位置は、最後は自分にしかわからない。言われたことを自分なりに解釈しながらやらないといけないですね」

今では左足のほうがスムーズに出せるようになった。この8カ月間で、心身ともに進化したことは明白だ。「まだまだ」と謙遜しながらも、彼はリーグ戦でMVPを獲得し、誰もが認める筑波大のキャプテンとして、4月からV神戸でプロキャリアをスタートする。

「哲生さんがいたから今の僕がある」。山内は満を持して、Jリーグに挑む。

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