“人と同じ”を手放した、18歳の選択|米女子プロ・黒崎優香、日本を選ばなかった決断の先に

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女子サッカー

2024.03.26

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“人と同じ”を手放した、18歳の選択|米女子プロ・黒崎優香、日本を選ばなかった決断の先に

伊藤千梅

Writer / 伊藤千梅

2024年からアメリカの女子サッカープロリーグ「ナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグ(NWSL)」に所属する黒崎優香が、この国でプレーするのは2度目だ。1度目は、大学時代。全国大会の常連・藤枝順心高校でキャプテンを務め、3年生で日本一になると、高校卒業と同時にアメリカの大学に進学。その理由は、母親の言葉と、「自分で選択していきたい」という心の奥にある思いだった。
(第1回/全4回)

母の言葉で見えた日本以外の道

女子サッカー選手としてエリートコースを順調にたどっていた黒崎が、いばらの道へ進むことを決めたのは、18歳のとき。

過去7回の全国優勝を誇る名門・藤枝順心高校で、1年生のときは全国大会で準優勝。翌年には3位の結果を残し、最高学年として挑んだ第24回全日本高等学校女子サッカー選手権では、全国制覇を果たした。

キャプテンとしてチームを率いた黒崎であれば、卒業後は日本のトップリーグのチームに加入することもできたはずだ。しかし、当時はまだ女子サッカーのプロリーグ「WEリーグ」が発足する前。トップリーグとはいえプロとしてサッカーを仕事にしている選手は一握りで、多くの選手が仕事と競技を両立させていた。そのなかで、スポンサー企業で働きながらサッカーをする自分を、どうしても描くことができなかったという。

歴代の先輩の実績もあり、大学はどこにでも進学できる状況だったが、母親からは「サッカーでは進学してほしくない」と伝えられた。

「母からは『やりたいことや学びたいことがあって、サッカーを使って進学するのはいいと思う。でも、サッカーをするためだけに大学へ行って、途中で怪我をしたらどうするの?』といった話をされました。それを踏まえて、大学で学びたいことを考えてみたんですけど、全然思い浮かばなくて」

この言葉をきっかけに自分のキャリアを見直すと、海外に視野を広げた。始めはヨーロッパのチームを見ていたが、すぐにプロ契約を取れなかった場合、下のリーグからスタートになる。生活していくために働かなければならず、結果的に日本でプレーするのと同じ状況になりかねない。

さらに調べていくうちに見つけたのが、アメリカの大学だった。スポーツや成績が優れている人に支給される奨学金制度“スカラーシップ”は日本の奨学金とは異なり、全額支給の可能性もあることから、お金がなくても海外に挑戦できる。漠然とした興味を具体的にするため、高校3年生の夏には実際にアメリカまで足を運んだ。

そこで目にしたのは、日本のプロチーム並みの設備が整った大学の施設と、満員のスタジアムだった。

「芝生のグラウンドで練習ができて、ジムも器具が全部揃っている。プロテインや補食といった栄養面のサポートも当たり前な環境でした。『こんなに恵まれた環境はないな』というのを率直に感じました。また大学生の女子の試合なのに、たくさんの観客が入っていて。今の日本では絶対にありえないと思いました。その時に『自分もあのグラウンドに立ってプレーしたいな』という気持ちが強くなったんです。日本に帰る時にはもう『アメリカの大学に行こう』と決めていました」

自分のキャリアは、自分で決める

母親の言葉をきっかけに、用意されていない道を選んだ。彼女の心の奥底には、「人と同じ道を行きたくない」という思いがあった。

「海外に行くのは大変だろうなとは思ったけど、他の人とは違う道で挑戦したいという気持ちがありました。小さい頃からそうなんですけど、これまで自分のキャリアは自分で決めてきていたので。誰かに決められたくないという思いは強かったです」

そう、彼女ははっきりと言い切る。

「サッカーができるのは30歳くらいまでだなというのは、当時から思っていました。怪我があるとさらに早めに引退する可能性もある。だから、母親の言葉を聞いて『たしかにそうだな』と思った自分もいて。もちろん、なにをしていても学ぶことはあります。でも、やりたいことがなくて、ただ『スポンサーの会社だから』と働くのは嫌でしたし、進学しても、将来につながる学びが残らないと今後困るなと思うようになりました」

日本で学びたいものがないのであれば、世界へ飛び出すことで、サッカーも英語の勉強もできるのはメリットではないか。そう思った当時18歳の黒崎は、言葉も満足に話せないなかでアメリカの大学への進学を決断。

ここから“人と同じ”を手放した、未知の挑戦が始まった。

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