「なでしこジャパン」でなくとも、夢は叶えられる|米女子プロ・黒崎優香、日本を選ばなかった決断の先に

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女子サッカー

2024.04.09

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「なでしこジャパン」でなくとも、夢は叶えられる|米女子プロ・黒崎優香、日本を選ばなかった決断の先に

伊藤千梅

Writer / 伊藤千梅

2024年、黒崎優香は一つの夢を叶えた。それは「アメリカの女子サッカープロリーグ『ナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグ(NWSL)』でプレーすること」。大学卒業と同時にアメリカを離れると、3年間、ここに戻るためのキャリアを積んできた。巡ってきたチャンスをつかんだ今、彼女はこの国で、次の夢へと向かう。

(第3回/全4回)

ようやくつかんだ米女子プロへの切符

大学を卒業してから再びアメリカに戻るまで、3年の月日が経った。

目標にしていたNWSLが採用しているのは、ドラフト制度。大学卒業後に移籍をするためには、目立った結果を残し、チームから指名される必要がある。

しかし黒崎は大学時代、怪我の影響で思うようにプレーが出来ていなかった。また、卒業前の1年間は、コロナの影響で試合数が激減。監督交代といったイレギュラーな出来事も重なり、シーズンを通してチームも1分8敗と成果に乏しかった。

目に見える結果もなく、卒業後すぐにNWSLに挑戦することはできなかった。

「経験を積まないと、アメリカには帰ってこられない」

ある程度のレベルの国で試合出場時間や得点数といった数字を残すことができたら、移籍をするときに見てもらいやすくなる。最終的にアメリカに戻るために、試行錯誤する日々が始まった。

「女子の世界では、一部のトップ選手しかお金を払ってまで獲得してもらえません。だから、NWSLと同じシーズンを採用している北欧のリーグのほうが、移籍金や違約金がかからずに移籍できるため有利なんです。私が最初にプレーしたのはオーストリアですが、半年ほどで北欧のノルウェーに行きました」

1年半ノルウェーでプレーした後、一度日本に帰国。次のチームを探すなかで、契約が白紙に戻る経験もした。それでも「自分ができることを頑張ろう」と、所属先がない時期は千葉県社会人リーグ1部の男子チーム、市川SCの練習に参加していた。

「また新しい刺激をもらいました。選手たちは仕事をしながらサッカーをしていて、次の日に仕事があるのに23時過ぎまでトレーニングしている選手もいて。チームに貢献したいとか、勝ちたいという気持ちが大事なのは分かっているようなことなんですけど。そういう姿を目の当たりにして『本当にサッカーが好きってこういうことだよな』と改めて実感しました」

日本での7カ月間を経てフィンランドへ移籍すると、限られた時間で結果を残した。そして2024年1月、アメリカのレーシング・ルイビルFCへ。念願のNWSL入りを果たした。

「大学を卒業してからの3年間、自分の選択は本当に正しいのかと悩むこともありました。でも、アメリカに戻ってきて、すべてが意味のあるものだったのだと実感できています」

道は一つではない

FIFAランキング2位ということもあり、アメリカは国内リーグが充実している。高い水準を求め、NWSLには各国のフル代表経験のある選手が数多く集まっているのだ。一方、黒崎は日本代表に選出されたことがない。そのため、アメリカでプレーするのは難しいかもしれないと弱気になることもあった。

「『なでしこジャパンに入りたいか』という質問はいろんなところでされますし、目指してないと言えば嘘になる。プレーを見てもらうのであれば、日本にいたほうが目に留まるかもしれません」

それでも「日本代表がゴールではない」と、自分を奮い立たせ、夢を形にした。

「代表経歴がなくてもビッグクラブでプレーできる。いろんな道があっていいということを、今後、プロを目指す子どもたちに示したい思いは強くありました。アメリカの大学からNWSLを目指せる選択肢を作ることができたのかなと思っています」

当然、アメリカでプレーするだけでは意味がない。これから始まる挑戦に「ワクワクしています」と笑顔を見せると同時に「今からが本当の勝負」と付け加えることを忘れなかった。

また、サッカー選手でありながら、彼女は7年の間で「経営者」というもう一つの道を切り拓いた。選手として高みを目指しながら、人生のキャリアも積み重ねてきたのだ。

それは夢を追い続けてきたからこそ、選び取ることができたことなのだろう。そして自ら切り拓くと同時に、道を示すことも忘れない。歩んだ道のりが次の誰かの選択肢になるように、自分の経験を誰かに伝える彼女は、やはり先駆者だ。「まだまだ発信していきたいと思っていますけどね」。黒崎はすでに、アメリカで次の道を歩み始めている。

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