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経営者×現役選手として伝える“選択肢”|米女子プロ・黒崎優香、日本を選ばなかった決断の先に
Writer / 伊藤千梅
黒崎優香は、現役のプロサッカー選手である傍ら、2021年1月に『ユウカ考務店』を設立した。事業内容は日本からアメリカの大学を目指す学生のサポート。「まずはアメリカの大学という選択肢を知ってほしい」。その思いを胸に経験してきたからできることで、サッカー少女たちの未来をつくる。
(第4回/全4回)
学生ながら会社を設立
初めて留学サポートのことを考えたのは、黒崎自身が代理人をつけずにトランスファー(転入)を経験した大学2年生のときだった。
「英語がすごくできたわけではないですが、学校を変更したときは、留学会社を通していないです。普通の大学探しとは少し違いますが、大学コーチとのやり取りなどは自分でやっていたから、私でもできるというのがわかりました」
留学会社のサポート体制はさまざまだ。手厚く手助けをしてくれるところもあれば、そうでないところもある。留学中には、友達から代理人の件で悩んでいると相談を受けたこともあった。
「私は実際に女子サッカー部へ留学した経験があるので、友達の話を聞いていて『自分だったらこうできるな』という考えが浮かびました。私がサポートをしたい人たちは、女子サッカーをしている人たちですし、自分がそのマーケットを広げていきたいという気持ちが出てきました」
思いを持っているだけでは、始まらない。黒崎は大学4年生で行動を開始。株式会社ナガオ考務店の組織開発ファシリテーター・長尾彰さんに連絡をとり「今後留学のサポートをしていきたい」と思いを語った。すると長尾さんは「やりたいことがあるなら、やりなよ。わからないことはサポートするから」と、まだ学生だった黒崎に会社の設立を勧めたのだ。
背中を押された黒崎は、事業のプラン立てから長尾さんに協力してもらい会社を設立。現在は選手活動と両立しながら、少しずつ女子サッカー選手の留学サポートを行っている。
新しい選択肢を伝えたい
なぜ、誰かのために動けるのか。その答えは、アメリカに留学していたときの経験にある。
「大学時代に、本当にいろんな人に助けてもらった経験があって。言葉もなにもわからないなか、生活や宿題など、なにか困ったときに手助けしてくれる人がいました。だから自分も、困っている人がいたら手を差し伸べられる人でいたいです」
今度は、手を差し出す側に。
選手活動と並行して事業を回すのは簡単なことではない。けれど、「現役だからこそできるサポートの形がある」と、黒崎は話す。
「選手と一緒に伴走できるところは、自分の強みかなと思っています。経験したから伝えられることはあると思うし、他の人とは違う立場でサポートできると思います。サッカーが強い大学に行きたい選手もいれば、勉強を頑張りたい選手もいるので、個々に合ったプランを組めるように今後はやっていきたいです」
アメリカの大学で4年間を過ごし、それが大変であることを知っている。だからこそ留学を簡単には勧められない。「ぜひ行ってほしいとも思っていない」というのが、彼女の本心だ。それでも「自分が経験したことは伝えていきたい」と熱く語る。
「自分が学生の頃は、あまり情報を得ることができませんでした。アメリカの大学に行くという道をもっと早くに知って英語の勉強に取り組んでいたら、高校を卒業してそのまま大学に行けたかもしれません。自分はアメリカに来て本当にいい経験をしたと思っているので、だからこそ『こういう選択肢もある』と伝えていきたいです」
いろんな国、文化の人たちと触れ合うことで、新しい考え方を吸収してきた黒崎。これからも先駆者として、自分のように挑戦していく人たちに手を差し伸べていく。
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