「まだギリギリ、バロンドールもゼロじゃない」“和製ハーランド”が図る、新天地での再出発|中島大嘉・水戸からの逆襲

黒川広人

Jリーグ

2024.09.06

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「まだギリギリ、バロンドールもゼロじゃない」“和製ハーランド”が図る、新天地での再出発|中島大嘉・水戸からの逆襲

黒川広人

Writer / 黒川広人

Interviewer / 黒川広人

Editor / 北健一郎

日本サッカー界待望の“速さ”と“高さ”を兼ね備えたFW。そのスケールの大きさから、和製ハーランドとも称された中島大嘉がプロ4年目のシーズンを迎えた。昨シーズンまでに記録したリーグ戦での得点数は「2」と、バロンドール(世界年間最優秀選手)が最終目標と語る男の現在地としては物足りない数字となっている。

J1の北海道コンサドーレ札幌から、J2の藤枝MYFCに期限付き移籍を果たした今シーズンも出場機会に恵まれず、4月末から3ヶ月以上に渡り、メンバー外の期間が続いた。そんな苦しむ中島に、今夏、熱いラブコールを送ったのが水戸ホーリーホック。

新天地での再出発を決断した異端の男が1mmの独占インタビューに応じた。

(前編/取材日:8月14日)

時速35.7kmのスピードと跳躍力

──7月19日に水戸加入が決まり、1カ月弱が経過しましたが、新生活には慣れましたか?

はい。今、新居に入って5日目ぐらいです。敷布団1個で生活してるんですけど、精神的にも、フィジカル的にも安定してるんで、いいチームに来たなって思ってます。まだ戦術的な課題もありますが、リーグ戦も2試合こなして、味方の特徴も理解してきて、ある程度水戸の一員にはなれてるかなと思っています。

──中島選手の魅力を知ってる人もいれば、まだ知らない人もいると思います。そんな人々に自身が思う魅力を伝えるとしたら?

華ですね!

──華ですか!?

俺って華、あるでしょう?あいつめっちゃ足速いやんとか、めっちゃ高く飛ぶやんとか。多分、サッカーをそんなに分からない人でも、スゴさが分かりやすい選手だと思ってるんです。実際に試合での俺のトップスピードは35.7キロあって、かなり速いんですよ。サッカーのルールが分からない人でも、高く飛んでいることは分かるじゃないですか?とりあえず俺を見てろ!って感じですね。これからサッカーを好きになる層に向けて、Jリーグが自分みたいな選手を押し出してくれたら、リーグの人気も高まるんじゃないかなと思ってます。

──フィジカル面の状態もいいとのことですが、札幌に入団した時と比べて身体に変化を感じます。

188センチ、77キロでプロに入って、そこから 88キロをベースにして来ました。ただ、ここ3、4カ月で1回絞ってみようと思ったんです。それまで、毎食、米を2合食べてたんですけど、それを1回止めたら、どうなるんかなと思って。今は体脂肪率が10%で、体重も83キロなんですけど筋肉量も増えてるんで、いい感じですね。フィジカル的には過去最高にいいコンディションだと思います。

──プロとして4シーズン目を迎えましたが、改めてここまでを振り返ると?

もちろん表面上の結果としてはうまくいってないです。こんなはずじゃなかったと思うこともありますけど、人間的な成長で言うと、想像してたよりも明らかに上を行ってますね。イチ人間としては、すごく成長したし、新しい世界がたくさん見えてきているんで、いい4年間だと思ってます。

──「新しい世界が見えてきている」というのを具体化して教えてください。

ここ3、4カ月の自分の研究テーマにしていることが、外敵要因に自分の心を揺さぶられないことです。自分の選択・判断・決断をいかに自分自身で行うか?

今までの人生を振り返ると、本当に自分が求めていることじゃない選択をする場面って結構あって。周りの誰かがこう言ってるからとか。こういう前例があるからそれが正しいって思っちゃったり、世の中の常識でそっちがいいんだろうなっていう観点で選んでいたんです。

今まで気づいてたけど、見て見ぬふりしていたその弱さとしっかりと向き合うことで、自分にとって、今何が正しい選択か?よりも、自分が今どうしたいか?を重視して最近は生きています。だから周りになんか言われても「ああ、そう思うんですね。あなたは」っていうスタンスで、楽に生きられていますね。今までそんな人いなかったよとか関係ないなっていう。「俺が前例になります」って感じです。

──プロ入り時の加入会見では、3年以内に札幌でタイトルを獲得し、海外に挑戦して、最終的にはバロンドールを受賞したいと語っていました。当時、イメージしていた道とのギャップは感じていますか?

3年以内に海外行くっていう自分の人生設計は崩れましたが、それまでに海外からのオファーはもらっていたんです。ただ、当時の自分はそれを選択しなかった。一概に失敗だとは思っていませんが、今同じオファーが来たら絶対行きます。そういう意味では、当時の自分が望んでいた道を辿れていないと受け止めていますね。

──札幌・名古屋で3年間を過ごして、4年目の今シーズン前に藤枝への移籍を決めました。当時の心境は?

J1の選択肢もあった中で、カテゴリーを落とす選択をしました。プライドも全部捨てて、もうやるしかないなっていう。半年で点を取りまくって、パリオリンピックも行くぞ!っていう相当な熱量を持って挑んだんですけど。中々うまくいかず……苦しかったですね。

水戸の英雄になるのは、俺だ!

──苦しい状況の中、夏のウィンドウで3クラブからオファーが届いていたと聞いていますが、水戸移籍を選択した理由は?

J2の中位〜下位に位置している藤枝で、試合に絡んでいなかった自分にオファーを出してくれたっていうのがありがたすぎましたね。どこからも来ないと思っていたんで。水戸以外からもオファーが届いて、そっちの方が出場できる可能性は高いんじゃないかっていう周りの意見もあったし、自分も確かにそういう側面もあるなとは思ったんですけど。「水戸がいい」という自分の直感に従って決めました。各チームのフロントとも話をさせてもらいましたが、今思えば話す前から、自分の中では決まってましたね。

──水戸でのデビュー戦となったV・ファーレン長崎戦で決勝ゴールを挙げるも、続く仙台戦では悔しい結果を味わいました。ここからどんな活躍を見せていくつもりですか?

自分の価値を高めるにはうってつけ過ぎる状況だと思っています。チームが今、残留争いをしていて、ゴール数も多くないです。そんな中、夏に来た中島大嘉がデビュー戦で点を決めて、22戦負けなしの昇格争いをしてる長崎にアウェイで2-1と勝って、その決勝ゴールを決めたわけでしょ?ここから2桁得点を取ってチーム残留させるじゃないですか?この状況のチームで点を取ったら、サポーターの熱量が違いますよね。その熱がどんどん広がっていって、いろんな人に伝播したら、1点の価値が1点以上のものになると思うんですよ。

そしたら俺のこの半年、勝ちでしょ?前半の悔しさを取り返すぐらいのインパクトを残せるんじゃないかなと思ってます。チームと俺とが、WIN-WIN(ウィン・ウィン)ですよね。英雄が現れるならここでしょ!?、英雄になるのは俺でしょ!っていう。ここから、水戸の英雄、いや、日本の英雄になる予定で、そのうち歴史の教科書にも載るんで。

──歴史の教科書に載るための具体的なイメージは中島選手の中で描けているんですか?

今年、水戸の半年で2桁得点とって残留させるでしょ?来年、札幌に帰って、札幌で活躍したい気持ちも強いんですが、23歳と若くないんで仮に海外に行くとするじゃないですか?

2年以内に海外の中でステップアップするでしょ?そして、25、26歳の2年でめちゃめちゃ活躍して、27、28歳の一番調子のいい時にビッグクラブへ挑戦します。ヨーロッパ4大リーグのビッグクラブで得点王になれば、ワンチャン、バロンドールもあるでしょ?28の時にワールドカップもあるんです。今の日本代表は強いので、そこに俺が入って、点を取るイメージです。プロに入る前の記者会見で言った時より、可能性は明らかに減ってると思いますけど、まだギリギリ、バロンドールも0じゃないでしょっていう感じですね。そしたら載るでしょ、教科書!

──期待しています。まずは水戸でのシーズン後半戦に向けた決意を聞かせてください。

ここから、今シーズンの残り半年。水戸サポーター、水戸ホーリーホックに関わる人たち全員、俺が沸かせます。そして、俺たち、水戸ホーリーホックの仲間全員でJ2を席巻して、日本サッカー界を俺らが盛り上げてこう!

インタビュー動画

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