多彩なゴールで真価を示す、小川航基のネクストアクション|日本のエース成長譚

浦正弘

日本代表

2024.10.22

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多彩なゴールで真価を示す、小川航基のネクストアクション|日本のエース成長譚

青木ひかる

Writer / 青木ひかる

Editor / 難波拓未

「今、日本で一番点が取れるFWは僕です」。2024年3月にA代表に復帰後、その強気な言葉通りの活躍を見せる、小川航基(NECナイメヘン/オランダ)。2026年に開催されるFIFAワールドカップに向け、順当に予選を勝ち進む森保ジャパンで、評価を上げている選手の一人だ。現在6試合7ゴール中のストライカーは、2年後の大舞台で「日本のエース」となるべく、さらなる得点力アップに奮起している。

足りなかったゴール前での工夫

「スタートだろうがサブだろうが関係なく、僕がやるべきなのは得点を取ってチームを勝たせることです」

今か今かと出番を待ち侘びていたのが、2試合連続ゴール中の小川航基だ。

10月15日に行われた、W杯アジア最終予選のオーストラリア戦。ここまで直近3試合は複数得点を重ね快勝を収めてきた日本代表が、長身選手をそろえる相手に苦戦を強いられた。

0-0で試合を折り返し、58分にまさかのオウンゴールで先制を許した日本は、2023年3月の国際親善試合・ウルグアイ戦以来、約1年7カ月ぶりに1点を追う立場に。すると76分、途中出場のMF中村敬斗がドリブルを仕掛け、今度は相手のオウンゴールを誘発。約58,000人の観客が一斉に沸き立ち、埼玉スタジアム2002は一気に日本の“追い上げムード”に切り替わった。

そして迎えた83分、チームスタッフから交代の声が掛かると「待ってました」と言わんばかりに、小川はビブスを脱ぎ捨てピッチに立った。

出場からわずか1分で訪れた中村の全力疾走からのチャンスは、惜しくも折り返しのパスが足元に合わずGKにキャッチされてしまった。しかし90+4分には、200cmのDFハリー・サウスと、194cmのDFキャメロン・バージェスの“ツインタワー”に挟まれながらも、粘り強くボールを収め、反転して縦パスを供給。平均身長世界No.1のオランダリーグで培った経験を活かし、残り1分のラストチャンスにつながるファインプレーを見せた。

「長身の選手に慣れている部分はあったけど、とはいえ想定以上に大きかった。ただ、前向きにボールをつなげていくことが自分の役割だと思っていたので、あのシーンに関してはよかったと思います」

限られた時間でも、少なからず強みを出せた手応えはある。ただし、最も欲しかった追加点には届かず、1-1のままタイムアップ。小川も試合全体を振り返りながら、クロスを無効化され、打ち手を見いだせなかったことへの課題を語る。

「僕が出た時間は前半に比べてオープンな展開になっていましたが、それでも完全に押し込めていたとは言えなかったと思います。チームとしても、もっと工夫が必要だし、僕もしっかりと仕留めなきゃいけない」

「もう少し時間があれば……」と一言だけ本音をもらし、9月の中国戦と同様に悔しさを滲ませながらスタジアムを後にした。

強みの“器用さ”を生かして

5年ぶりのA代表復帰した小川は、ホームでは不発が続くものの、アウェイでは出場した3試合すべてでゴールを決めており、「日本のエースストライカー」への階段を一段ずつ上り始めている。

一方、今回のオーストラリア戦で多くの選手が「前線でのアイデア不足」を反省点に挙げており、チームとしても個人としても、得点パターンの拡充に期待が高まる。

2024年に代表戦で決めた4つのゴールのうち、3つは右サイドからのクロスをダイレクトで合わせて決めている。また、最も得意とするヘディングでスコアを動かすシーンも多く、三笘薫や伊東純也をはじめ、ドリブルから質の高いクロスを供給する強力なサイドアタッカーとの相性の良さはピカイチ。

ただ、小川の本来の強みは、利き足にこだわらず磨いたシュート精度の高さである。キャリアハイを記録した2022シーズンは、左足で8本、頭で8本、右足で10本の合計26ゴールを横浜FCで決め、現在所属するNECナイメヘンでも、その器用さが高く評価されている。

さらに相手の動きを分析しマークを巧みに外してフリーになることも得意としているため、その能力を最大限に活かせば、多彩な形から得点を量産できるはず。その一手として、小川はオーストラリア戦後、名波浩コーチと共に、上田綺世との「2トップ起用」の可能性について意見を交換し合っていた。

「もし2トップで出ていたら、相手CBをもう少し混乱させることができたかなって。(伊東)純也くんをはじめ、もっと周りともコミュニケーションを取って、よりいい攻撃を構築していきたい」

11月のアウェイ2連戦を挟み、次のホーム戦は年が明けた2025年の3月。

「これからもずっと『点を取るのは小川だ』というところを見せられるように」

厳しい敵地でのゴールはもちろん、日本のファン・サポーターの目の前で、喜びを爆発させる19番の姿が見たい。

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