ドリブル&クロスで“ネクスト・ジュンヤ”へ(平河悠/町田)|Road to Paris~大岩ジャパンの俊才~

浦正弘

日本代表

2024.04.03

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ドリブル&クロスで“ネクスト・ジュンヤ”へ(平河悠/町田)|Road to Paris~大岩ジャパンの俊才~

難波拓未

Writer / 難波拓未

U-23日本代表にとって、3月のU-23マリ代表戦とU-23ウクライナ代表戦は、パリ五輪アジア最終予選前、最後の強化試合だった。本大会への切符を懸けて戦うチームに入るために、選手たちは“最後のアピール”に奮闘した。「Road to Paris〜大岩ジャパンの俊才〜」では、特に存在感を示した選手に焦点を当てる。2人目はU-23マリ代表戦で先制点を挙げた平河悠だ。

(第2回/全3回)

代表初ゴールは電光石火の先制点

目が覚めるような一撃だった。

3月22日にサンガスタジアムby KYOCERAで行われたU-23マリ代表戦、電光石火の先制点を挙げたのは、左サイドハーフで先発した平河悠(町田)だった。

開始2分、右サイドからのFKを山田楓喜(東京V)がゴール前に蹴り込むと、ニアサイドで植中朝日(横浜FM)がフリック。これが相手DFに当たり、ボールがペナルティエリアに転がる。両選手が入り乱れるなか、こぼれ球にいち早く反応したのが平河だ。左足の柔らかなタッチで相手DFの長い足をかわし、右足をシャープに振り抜く。コントロールされたシュートは右ポストに当たりながらゴールに吸い込まれた。

町田で共にプレーする藤尾翔太も「悠にとっては代表初ゴール。すごく良いシュートだったし、日本の流れを良くするゴールだった」とこの先制点の価値を感じていた。

U-23マリ代表戦は大岩ジャパンにとって初のアフリカ勢との試合で、選手たちは特有のリーチの長さや間合いに苦しみ、1-3で敗れた。そのなかで、唯一の得点が平河のゴールだった。しかし、今回の強化試合で平河がアピールしたのは数字に残るものだけではなかった。

まるで伊東純也のような特別な突破力

3月25日、北九州スタジアムでのU-23ウクライナ代表戦では、後半開始から右サイドハーフとして途中出場し、独自の強みを発揮した。

56分、右サイドでボールを引き取ると、目の前には相手選手がいた。ゴールへの直線的な進路は塞がれ、さらにその後ろにはカバーリングの準備をした選手が待ち構えている。U-23ウクライナ代表が厳重な警戒態勢を敷いてきたが、平河は迷うことなく縦に仕掛けた。対面する相手にゆっくりと向かっていき、鋭いシザースを入れて急加速。右サイドの深い位置に広がるスペースにボールと一緒に飛び込んでいき、クロスを供給する。これは惜しくもブロックされたが、平河にしかできないプレーを見せた。

「正直、今日対戦した相手のフィジカルはJリーグよりも強いと感じました。今回の強化試合は削られることが多く、けっこう踏まれたりして痛かったんですけど、寄せの速さと強さを体感できました。より早くポジションを取ることができれば、前を向いた時は抜けるので、そういう場面をいかに出せるかが大切だと思いました」

縦に抜ける日本人は多くない。右サイドハーフで先発したのは左利きの山田で、カットインやサイドバックとの連係でサイドを崩すプレーを強みとしている。単独で右サイドを縦に突破してクロスを上げられる選手で世界において躍動しているのは伊東純也(スタッド・ランス)くらいだろうか。あるいは、左サイドであれば、現在負傷離脱中の三笘薫(ブライトン)だ。

U-23ウクライナ代表戦が国際試合5戦目ながら、平河は縦突破という自分の特徴を発揮して相手の脅威となっていた。まるで伊東や三笘のように。間合いや体格の違う外国籍選手とマッチアップする難しさを感じつつも、手応えはつかんだ。

平河は、日本サッカー界にとって稀有な力をもっていることを証明してみせた。

Jリーグ1位のドリブルと2位のクロス

平河は左右どちらのサイドでもそん色なくプレーできる選手である。今シーズンのリーグ戦で開幕から3試合は左、その後2試合は右で出場し、存在感は勢いを増すばかりだ。

「左サイドのほうが右足でボールを持てる分、シュートの精度は上がるかもしれません。(やりやすいのは)どっちかと言えば左サイドくらいの感覚ですけど、どっちでも不自由なくプレーできるのが武器なので強みにしたいです」

その言葉どおり、平河はJ1で異才を放っている。

Jリーグのあらゆる数値を扱うデータサイト『Football LAB』が独自のロジックで数値化した指標において、「チャンスビルディングポイント」の2つの項目が突出している。

「ドリブル」と「クロス」だ。

ドリブルはリーグ1位、クロスは同2位を誇る。このチャンスビルディングポイントとは、さまざまな選手評価方法のなかで、「シュート機会への貢献」という観点を重視したものである。現在、J1昇格組ながらも破竹の勢いで首位を快走するクラブにあって、チャンスメイクという重要な役割を果たしているのが平河なのだ。

パリ五輪アジア最終予選のU-23アジアカップ、その先の本大会メンバー入りへ。強化試合で大きなアピールに成功した平河は、大岩ジャパンで“ネクスト・ジュンヤ”になれるか。

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