遠藤航のラストパスの裏側にある“縦思考”とは?|森保ジャパン アジアカップ戦記 vsベトナム

Taisei Iwamoto

日本代表

2024.01.19

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遠藤航のラストパスの裏側にある“縦思考”とは?|森保ジャパン アジアカップ戦記 vsベトナム

舞野隼大

Writer / 舞野隼大

1月14日、日本代表はアジアカップのグループDの初戦、ベトナム戦に臨んだ。前半に南野拓実が先制しながら、セットプレーから立て続けに2点を決められる苦しい展開に。それでも、前半終了間際に南野、中村敬斗の見事なゴールで3-2と逆転に成功する。後半から出場した上田綺世にも追加点が生まれて4-2で突き放した。45分に鮮やかな縦パスで同点弾をアシストし、日本の勢いを取り戻させた遠藤航は、なにを思考していたのか。

嫌な空気を変えた1本のパス

前半終了間際の時点で1-2。優勝候補の筆頭に挙げられる日本は、グループステージの初戦で黒星を喫する可能性は大いにあった。

その嫌な空気を一変させたのが、キャプテン・遠藤航の1本のパスだった。

リードし、低い位置で構えてくるベトナムはディフェンスラインに6人を並べてきた。前半45分、中盤でフリーになっていた遠藤がボールを受けると、ファーストタッチで素早く前を向く。そして、前方の狭いスペースに動き出していた南野拓実へラストパスを通し、同点が生まれた。

遠藤は試合中、相手の守り方を見て、「相手は前からプレスに来るところと、引くところは引いてブロックを作る守り方をしていました。そのなかでも、縦に刺せる時はしっかり刺すとか、裏の(スペースを使う)意識を持つようにしていました」と語る。

その上で「ああやって狭い中でも(わずかにスペースのあった)あそこに入って、ボールを受けて前を向いて縦に入れるというのは、ブロックを敷く相手に対しては最終的には有効になります。横でずっとボールを動かしているよりは嫌だと思うので、相手を嫌がらせる意味でもチャレンジするところはどんどんチャレンジしていこう意識していました」と自分たちが少しでも脅威を与えられるように、常に思考を回しながらプレーしていた。

得点シーンでは、スペースでボールを引き出し顔を上げた遠藤の目に映っていたのは、自分に対してし正面と左側から寄せてくる相手が2人、前方左側に中村敬斗、右側に細谷真大、そして正面に空いたスペースを利用しようと動く南野の姿。

「味方のポジショニングや、相手がどう守っていてキツそうなのか、中を締められていないのかというのを見ながら、縦を見ていて、今日に関して言えば(中央の)拓実のところと(両サイドの伊東)純也、敬斗の裏を意識してプレーしていました」

通常なら後ろで6人に構えられると崩すのは難しくなる。それでも遠藤は、相手の守備陣形に隙が生まれないか常に監視しながら、自分に相手が食いついてきた瞬間、スペースが空くと感じ取った瞬間に正面の相手の股を抜くパスを通してみせた。

2人の思考が一致した瞬間

ボールを受けてわずか1秒にも満たない出来事。この一瞬の間には、遠藤と南野の阿吽の呼吸も発揮されていた。

「一緒にやってきたメンバーが多くなってきているので、選手個人個人の特徴もわかっている。そこはしっかり生かそうとやっています」

南野とは2016年のリオデジャネイロオリンピックなど、アンダー世代の時から共にプレーする間柄だ。そのためお互いがなにを考えているか容易に感じ取れる。

前方にできたスペースを見つけた2人の思考が一致し、硬い守備を敷かれても一気にゴールへ結びつけることができた。

たった1本のパスで局面と戦況を180度変えたプレー。その裏側には、遠藤の“縦思考”とも呼べるものがあった。

アジアカップはこれからも難しい局面が何度も訪れるだろう。がっちりと閉じられたブロックをこじ開けられない。そんな時こそ、遠藤が見せた縦を見る意識とわずかな隙間を通す技術が求められる。

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