ラ・リーガ公式
5年、10年、その先も。ラ・リーガ愛あふれるU-NEXTの願い|U-NEXTが仕掛けるラ・リーガ超熱狂戦略
Writer / 北健一郎
ラ・リーガ配信の新たなライツホルダーに名乗りを上げた、動画配信サービス『U-NEXT』。
「楽しく本格派」と「独占」を軸に日々試行錯誤しながら、1年目を走り出した。
「もっともっと、スペインのサッカーを楽しんでもらいたい」
榎本耕次さんと菅原慎吾さん(スポーツ部ラ・リーガ担当)が見据える、今後のプロジェクトの展望とは。
(第3回/第3回)
課題は「3大クラブ」以外の視聴数
2023年8月14日に開幕した、ラ・リーガ2023-2024シーズンも、気づけば折り返しを過ぎ、後半戦に差し掛かった。ここまで大きなトラブルなく試合を配信するU-NEXTだが、現時点で一つ、大きな悩みのタネを抱えている。
榎本「やはり2大巨頭のレアル・マドリーとバルセロナ、そして久保建英選手が所属するレアル・ソシエダに視聴数が偏ってしまうことですね。大前提として予想していたことではあるのですが、想像以上にその差が大きく開いています」
そもそものファン・サポーターの母数にもばらつきがあるため、差が開くのは当然のこと。ただ、サッカー中継を中心に配信するメディアと比べ、ライト層でも楽しみやすい有名選手が集まるクラブの視聴数の高さが、より顕著に数字に現れているという。
榎本 「マイナーなクラブもそうですが、本来ファンが多いはずのアトレティコやセビージャの試合でさえも伸び悩んでいるのは、少しショックでした。試合数を限定してライセンス契約を結ぶこともやり方としてあったなかで、僕たちは全試合配信しようと決めて、そこにコストを割いています。理想としては、優勝争いだけでなく、下位のクラブ同士の試合も楽しんでほしい。すぐに結果を出すことは難しいので、地道な戦いですね」
一方、すでにラ・リーガ目当てで契約しているユーザーからは、実況・解説の質の高さに加え、「見逃し配信期間が長くてありがたい」「試合がない日やオフシーズンにも、他のコンテンツを楽しめるのはうれしい」という声も多く集まり、徐々にユーザー数も増え始めている。
これはU-NEXTが理念に掲げる「間口は広く、奥行きは深く」に通ずる部分でもあるが、いかにライト層もコア層も「夢中になれる」工夫ができるかが、今後のラ・リーガ配信の鍵となる。
ラ・リーガ配信の歴史を紡ぐために
課題こそあるものの、放送開始から実況・解説の倉敷保雄氏、小澤一郎氏、桑原学氏との独占契約、クラシコの映画館ライブビューイングイベントと、インパクトのある施策を打ってきた。
先述したとおり、上位から下位まで全20クラブの魅力をもっと伝えるため、そしてライト層にもコア層にも“ラ・リーガ”をもっと楽しんでもらうために、次に力を入れたいと話すのが「ピッチ外の現地情報の発信」だ。
菅原「僕が最近思っているのは、日本のサッカー中継は戦術の話がすごく多いなということ。楽しむためにはここも知らなきゃいけないと気構えてしまって入り口も狭くなるし、ちょっとお腹いっぱいなところもあるんじゃないかなと。 現地の人もボール支配率や勝率などの数字を見て話はしますけど、可変システムとかハーフスペースとか、難しい言葉は使わないんですよ。なので、お酒を飲みながら気軽に話せるような雰囲気を残しておきたいというのは、ずっと思っています。とはいえ、戦術が好きな人もいっぱいいて、特に若い世代には根強い人気があるので、いかにバランスを保つかが重要です」
榎本 「スタジアムの中だけではなく、スペインの文化的なところや、地域性とか面白いカルチャーも届けながら、どんどんスペインに興味を持ってもらいつつ、サッカー愛も深まってくれたらうれしいですね」
菅原 「他にもやりたいことはたくさんありますけど、焦らず一つずつかな」
そう力説する言葉や表情からは、「ラ・リーガの魅力をもっと知ってもらいたい」という切実な思いが汲み取れる。
そんな2人が目指す大きな目標は、放映・配信権を巡る熾烈な争いの中で迎える5年後の「ライセンス契約延長」。
この先10年、20年とラ・リーガ配信の歴史を紡ぐための挑戦は続く。
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