GNK Dinamo
【独占インタビュー】日本代表へ。「もう26歳。焦りしかない」|金子拓郎 ディナモ・ザグレブ戦記
Writer / 黒川広人
JリーグNo.1ドリブラーが2023年の夏、海を渡った。金子拓郎。複数のオファーの中から金子が新天地に選択したのはクロアチアの絶対王者ディナモ・ザグレブ。だが、初の欧州挑戦はCL予選敗退、監督解任……と逆風からのスタート。それでも、一つのゴールを契機にチャンスをつかむ。11月からスタメンを勝ち取り、ここまで公式戦で3ゴール、6アシストをマーク。東欧の地で戦い続ける”サムライ”が独占インタビューに応じた。
(第3回/全3回)
海外で進化した“リアクションのドリブル”
──金子選手の代名詞であるドリブルの“こだわり”についても聞かせて下さい。クロアチアのDFは日本のDFとは間合いもリーチも違うと思います。
海外で1番うまくなったのは“リアクションのドリブル”だと思います。
──リアクションのドリブル?
日本の選手って、ほとんどディレイっていうか、自分から飛び込んでこない。同じ距離感のまま、下がりながら対応することが多いんです。自分は、そういうタイプの選手の方が得意だったんですよ。自分のタイミングで仕掛けやすいから。
でも、クロアチアでは、がっつり飛び込んできたりとか、トラップ際にスライディングでめっちゃ飛び込んできたりとか、1発で食いついてくる。最初は戸惑いもありましたけど……。
今は相手を見て、飛び込んでくるのか、飛び込んでこないか?どちらの足でくるか?仮に相手が来たら、ファーストタッチではがすとか、2タッチ目で逆を取るとか。相手の状況を見ながらプレーができています。
──チームメートとのコミュニケーションは英語でとっている?
簡単な英語ですけど、なんとかやっています。細かい話は通訳に協力してもらっていますが、日常会話はできるだけ自分で話そうと。クロアチアに来た時は、ほとんど何も話せない状態だったので、ちょっとは成長したかなと思います。
──日本では英語の勉強はしていたんですか?
ちょくちょくはやっていたんですけど、現実味がなかったというか……。1番後悔しているところです。もしも戻れるなら小学校からガチで英語をやりたい。今は、オンラインで英語の学習をしていて、毎日、英語に触れるようにしています。
正直サボりたいなと思う時もあるんですけど。ちょっとでも毎日やろうと、自分の中で決めてます。チームメートも英語うまくなったと褒めてくれるので、そういうのはうれしい。
──クロアチアで時間ができた時はどんな過ごし方をしているんですか?
買い物かなぁ……。日本と比べて娯楽がないんですよ。服を買うとか、それぐらいですかね。あとは、昔から家で過ごすのが好きなので、漫画を読んだり、ゲームをしたり、YouTubeを見たりみたいな。札幌の時とあまり変わらないかもしれない(笑)。
──サッカーの試合も見ますか?
プレミアリーグも見ますし、札幌の試合も見てます!時差的に、(クロアチアの)朝の時間帯にやっているから生で見られないこともありますけど、ハイライトじゃなく、ちゃんとフルマッチで見ています。あと、シンジさん(小野伸二)の引退試合(最終節の浦和レッズ戦)は朝6時キックオフだったんですけどライブで見ましたね。
1日でも早くステップアップしていきたい
──今後、ヨーロッパでどんなキャリアを描いていますか?
まずは、ディナモでリーグ優勝したい。それからカンファレンスリーグ(※)でスペインのベティス戦があるんですが、抽選前から、1番強そうなベティスとやりたいと思っていたので楽しみです。
自分が上に行くには個人の結果が大事になるので、ゴール、アシストという目に見える数字を伸ばしたい。自分のストロングであるドリブル、1対1っていうところで違いを毎試合見せていかなきゃいけないと思っています。具体的には10ゴール・10アシストが目標です。
もう26歳。焦りしかありません。ディナモにはCLに出られるチャンスもありますが、5大リーグを目指して、1日でも早くステップアップしていきたいというのが本音です。
※チャンピオンズリーグ(UCL)、ヨーロッパリーグ(UEL)に次ぐ、ヨーロッパの第3階層のレベルの大会
──ディナモでの後半戦で注目してほしいポイントをあげるとしたら。
今、首位のハイドゥクより消化試合数が2試合少ないんですけど。2勝したとしても勝ち点1差ある状況です。また、2位のリエカもほぼ同勝ち点にいるので、優勝争いはかなり面白い状況になっています。そういうプレッシャーがかかる中で、優勝に導けるような選手になりたいと思っています。
──ディナモで結果を出していけば、金子選手の目標である日本代表も見えてくるはずです。
日本代表に入るために、大好きだった札幌を離れて海外に来たので。サッカー選手をやっている以上、日本代表を目指していない人はいないと思います。そこを目指さないようだったら、サッカーを辞めます。必ず行きたい。そのためにも、今ここで結果を残し続けていきたいです。
──元旦のタイ代表戦のメンバー入りもあり得るのではと思ったのですが……。
ちょうど僕が活躍し始めたタイミングだったので、ちょっと遅かったなと思いますし、そこまで期待はしてなかったです。もちろん悔しいですけど、一喜一憂してパフォーマンスを落としては元も子もないので。結果を残し続ければ、いつか呼ばれる可能性があると思うし、そこに向けて、クラブでやっていくしかありません。
──ブライトンの三笘薫選手を始め、大学選抜で共に戦った選手が日本代表に何人もいます。
すでに海外に行ってる選手もいるし、J1でバリバリ主力でやってる選手もいますし、みんな本当にすごい。あのメンバーに都リーグだった自分がよく入っていたなと、今振り返っても信じられません(笑)。
薫は日本最高の選手だと思いますし、左右は違いますけど、同じウイングで、ドリブラーという共通点があります。ユニバのチームメートが、世界のトップクラスまで行っているわけですから。自分もあの舞台に行きたいという気持ちになります。
──金子選手がどこまで這い上がっていくのか、楽しみにしています。
はい、日本に活躍を届けられるように頑張ります!
【取材後記】
「今だから、笑い話にできますけど……本当にきつかったです」
その言葉とは裏腹に、苦難を一つ乗り越えた金子拓郎の表情には充実感が滲む。取材の直前にはロストバゲージに遭うハプニングもあったそうだが、あっけらかんと話しているのが何とも頼もしい。
今後も異国の地で上を目指す過程で壁にぶつかることもあるだろう。ただ、何度も這い上がってきたこの選手だったら、最大の武器であるドリブルのように力強く切り開いていくだろう。
クロアチアでのシーズン後半戦は1月23日に再開する。