中西哲生×筑波大×純度の高いひたむきさ|進化するN14中西メソッド 筑波大で始まる技術革命

本田好伸

大学サッカー

2024.01.11

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中西哲生×筑波大×純度の高いひたむきさ|進化するN14中西メソッド 筑波大で始まる技術革命

本田好伸

Writer / 本田好伸

中西哲生は、2023年4月から筑波大学蹴球部のテクニカルアドバイザーに就任した。結果は、6年ぶりの関東大学リーグ優勝、インカレの7年ぶりベスト4。筑波大はなぜ、強くなったのか。中西は8カ月間、週に複数回のトレーニングを続けた。片道約2時間、中西を突き動かしたものが、そこにはあった。
(第1回/全5回)

編集協力=ウニベルシタ

中西と出会って進化した筑波大

中西哲生が20年以上をかけて体系化を進めてきた技術理論が『N14中西メソッド』である。久保建英を小学生時代から指導してきた理論は2023年、さらに進化を遂げた。

このメソッドを一言で表すなら「試合で再現性のある技術を発揮するための理論」だ。ミスのスポーツと呼ばれるサッカーには不確定要素も多く、“全く同じ状況”は生まれない。

一方で、選手個人が同じような状況で、同じように技術を発揮することは可能だ。つまり、究極の技術を持つ11人が集まれば、そのチームは最強の再現性を備えた集団となる。N14中西メソッドとは、個人の技術を突き詰め、チームを最大化する理論だと言える。

そのことが確信に変わった。

中西は2023年4月、筑波大蹴球部のテクニカルアドバイザーに就任し、8カ月間、再現性のある技術を授けてきた。そして選手たちが、ピッチでその価値を証明した。

「選手も青天の霹靂だったと思います。パーソナルコーチである普段は、選手が能動的に『練習したい』と来てくれるところから始まります。実際、小井土(正亮)監督は選手に『技術を伸ばしたい人は中西さんから学んでください。ただし全員がやる必要はない。興味のある人だけやってください』と伝えてくれました」

そもそも、意識も向上心も技術の水準も高い集団である。気がつけば「GK以外、攻撃と守備のかなりの選手を見ることになった。練習後に居残り練習したいかを聞いて、選手がたくさん待っていれば1、2時間かかることもあります」と、中西の前に行列ができた。

特筆すべきは、2つある。

一つは、選手の表情だ。とにかく、楽しそうなのだ。「そういうことか!」「マジか、うめぇ」「今、つかみかけた!」と、選手は口々に言い、その場にいる誰よりも正確な技術を見せる中西のデモンストレーションに感嘆し、仲間のプレーにリアクションし、自分の所作に落とし込もうと、真剣かつ、意気揚々と練習に取り組んでいく。

「みんな、とんでもなく進化しています。で、僕の仕事は練習まで。試合になったら本人がいかに選択するか。もちろん、練習でやっていることが出るとめちゃめちゃうれしい」

学んだことを試合で発揮できる喜びは、選手のモチベーションにもなっていた。

もう一つは、結果だ。

筑波大は2023年、6年ぶりに関東大学サッカーリーグ1部を優勝し、インカレも7年ぶりにベスト4へと進出した。結果とは、中身も含んでいる。練習でやっていることが、ピッチでどんどん出るようになった。重心を上げること、ボールの置きどころ、目線、体の力感、足の出し方や身体操作、そしてフォーム。試合直後、中西は選手それぞれに映像を共有し、フィードバックする。逆に選手から出来を聞かれることも多い。筑波大は、強くなった。

なぜ、強くなれたのか。中西は、端的にこう話す。

「彼らの『純度の高いひたむきさ』です。それはもう、衝撃的なほど」。選手はひたすら技術の向上を求め、その姿勢に驚愕した中西自身が、誰よりも感化されていった。

「すごい集団です。意識が高すぎる。自分が失ったものにハッとさせられっぱなし。54歳の自分は、リミッターを切れていない部分がありました。でも筑波大に来るようになって、それは完全になくなりました。本当に、やれることをすべてやり尽くした」

中西がいたから筑波大は進化し、選手たちがいたから、中西もまた進化した。

筑波大×中西哲生という稀有な掛け合わせ。求め合う両者が、日本サッカーに価値を示した。この先、選手たちの輝きと共に、N14中西メソッドはさらに真価を発揮するはずだ。

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